研究実績の概要 |
レアメタルの個別分離は資源リサイクルの観点から重要である。本研究では、レアメタルの分離剤の開発のために、大環状化合物であるカリックス[4]アレーン誘導体に着目して研究を行ってきた。以前の研究で、トリアルキル―モノ酢酸型カリックス[4]アレーン誘導体のほとんどの誘導体では、アルカリ金属のうちリチウム選択性を示すことが明らかとされたが、より立体障害の大きな誘導体ではカリックス[4]アレーンの合成の際に鋳型として利用したナトリウムに選択性が戻ることが明らかとなった。さらに、それら誘導体を含浸した樹脂でも同様な選択性を示したが、メチレン架橋した樹脂では脱水和の影響を多く受けるためにセシウム選択性を示し、リチウム選択性が観られなくなった。これらを踏まえ、当初考えていた金属に残った水和水とアルキル鎖の疎水基との反発が起こる、という概念で説明するには限界があり、別の理由があることが示唆され、研究を進めた。各誘導体による抽出、各樹脂による吸着、また類縁体としてトリプロピルやトリベンジル―モノN,N-ジエチルアミド型カリックス[4]アレーン誘導体を検出素子とするリチウム選択性電極による電位応答の結果から、リチウム選択性は、リチウムイオンと配位子が錯形成する際に、リチウムに残った水和水と配位原子との間で水素結合などの特異的な親和性が生じていることが示された。
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