研究課題/領域番号 |
25410195
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
山田 真路 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (80443901)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | DNA / 金属ナノ粒子 / レアアースイオン / グリーン化学 / 環境材料 / 有機-無機ハイブリッド体 / 金属イオン回収 / 重金属イオン |
研究実績の概要 |
近年、希少金属(レアアース)の枯渇が問題視されており、レアメタルを回収し再利用することが望まれている。そこで、排水等に含まれる希少金属イオン(レアアースイオン)を、サケ白子二重らせんDNAを利用して集積する事を目的とした。特に、Fe3O4のような磁性を有した金属粒子にDNAを担持し、水中からレアメタルイオンを集積し、その金属イオン集積素材を磁石により回収することとした。そこで、初年度(平成25年度)はDNA担持ナノ粒子の作製を中心に研究を行い、作製したDNA担持ナノ粒子の基礎物性を評価した。平成26年度は研究計画の通りDNA担持ナノ粒子を用い、重金属イオンおよびレアアースイオンの集積を行った。 DNA担持ナノ粒子は水中でも安定な素材であることから、DNA担持ナノ粒子を金属イオン含有水溶液に浸漬し、浸漬前後の吸光度から金属イオンの集積能を評価した。金属イオンの集積実験には Cu(II)イオン、Zn(II)イオン、Cd(II)イオン、Y(III)イオン、In(III)イオン、Tb(III)イオン、Mg(II)イオン、Ca(II)イオン の8種類の金属塩化物を用いた。また、金属イオンを集積したDNA担持ナノ粒子は磁石により回収した。初めに、金属イオンの集積時間を検討した。その結果、金属イオンの集積量は時間とともに増加し、2-3時間で一定になった。そこで、金属イオンの集積時間を3時間とし、様々な濃度および様々な金属イオンの集積実験を行った。その結果、DNA担持ナノ粒子は重金属イオンとレアアースイオンに対して高い集積能を示したが、Ca(II)イオンやMg(II)イオンに対して集積能を示さなかった。これらの事から、DNA担持ナノ粒子は金属イオン選択性を有していることが示された。 以上の事から平成26年度の目的であった、DNA担持ナノ粒子による金属イオンの集積に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の平成26年度における計画は、DNA担持ナノ粒子による重金属イオンやレアアースイオンの集積である。その結果、研究実績の概要に示した通り、DNA担持ナノ粒子を用いることによって重金属イオンやレアアースイオンの集積を示すことが出来た。このため、研究計画の80%は達成できたと考えられる。残りの20%に関しては評価した金属イオンが8種類と少ないことである。これは当研究課題の金属イオンの集積能評価を、紫外可視分光光度計を用いた比色法により行っているため、金属イオンの検出方法の探索に時間を費やすためである。時間を省略するため誘導結合プラズマ(ICP)分析による定量を行ったが、時間測定をすることが困難であったため本研究課題を遂行するには不向きであった。また、原子吸光分析による評価も同様であると考えられる。そのため、本研究を遂行するためには新たに紫外可視分光光度計等を導入する必要が有ると思われる。今後、分光器の台数を増やすことによって、様々な金属イオンの集積能を評価したいと考えている。一方、重金属イオンおよびレアアースイオンを集積したDNA担持ナノ粒子の再利用も検討した。その結果、キレート剤で洗浄することによってDNA担持ナノ粒子を再利用できることが示された。また、再利用したDNA担持ナノ粒子の金属イオン集積量も再利用前後において変化しないことが示された。 上記に加え、DNAの担持量を増やしたDNA担持ナノ粒子の調製も試みた。その結果、DNAとシランカップリング剤の割合を変えても、DNAの担持量はほとんど増加せず、混合溶液の量を増やすことによって担持量が増加することが示された。そこで、DNAの担持量が多いDNA担持ナノ粒子で同様の実験を試みたところ、90%以上の重金属イオンおよびレアアースイオンを集積出来る事が示された。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度(平成27年度)は今までの結果をもとに当研究課題「DNAナノ粒子複合体を用いたレアメタルイオンの回収」を更に発展させ遂行する予定である。特に、当研究課題で用いる金属イオンの種類を増やしたいと考えている。そこで、有機合成の触媒として用いられるため、実験室から排出されることが多いパラジウムや白金等のレアアースイオンの集積を検討したいと考えている。またそれと同時に、水銀や鉛、クロム等の重金属イオンの集積も行いたいと考えている。 (アルカリ金属イオン等の軽金属イオンは集積できないことが確認されているため、本研究課題では測定しない。) 濃度は平成26年度と同様、サブ ppb から数 ppm レベルを想定している。これらの事柄を遂行するにあたり、前項「現在までの達成度」に記載した通り、分光光度計の更なる購入が必要であると考えている。そこで、申請時の書類には記載していなかったが、新たに紫外可視分光光度計を購入したいと考えている。分光光度計の導入によって、DNA担持ナノ粒子による金属イオンの集積能評価が劇的に加速すると思われる。また、妨害イオン存在下における重金属イオンおよびレアアースイオンの集積も行いたいと考えている。具体的には誘導体化した金属イオンを高速液体クロマトグラフィーにより分離定量したいと考えている。 一方、平成26年度までのDNA担持ナノ粒子による金属イオンの集積は一種類のシランカップリング剤により作製している。そこで、機能性を有したシランカップリング剤を用いることによって、より効率的に金属イオンを集積できるDNA担持ナノ粒子を作製したいと考えている。そこで、金属イオンの集積と同時にシランカップリング剤の探索も行う予定である。 以上の事から、上述した実験を遂行することによって3年間で一定の成果を出すことが可能であると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入する予定であったサケ白子DNAを共同研究者ではないが、当研究課題のオブザーバーである西 則雄 教授 (現 北海道大学名誉教授、日生バイオ株式会社 顧問) から提供していただくことが出来たため。
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次年度使用額の使用計画 |
推進方策にも記載したが、当初の研究計画では予定していなかった紫外可視分光光度計の購入を考えている。そこで、繰り越された予算は紫外可視分光光度計の購入費に充てたいと考えている。
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