現在、日本国内において希少金属(レアアース)の枯渇が問題視されており、環境中に存在するレアアースを回収し再利用することが望まれている。そこで、本研究課題では排水等に含まれるレアアースイオンを、サケ白子二重らせんDNAを利用して集積する事を目的とした。特に、Fe3O4からなる磁性体表面にDNAを担持したDNA磁性体を作製し、水中からレアアースイオンを集積し、磁石により回収することとした。 初年度 (平成25年度) はDNA磁性体の作製を中心に研究を行い、作製したDNA磁性体の基礎物性を評価した。2年目は(平成26年度)は前年度に作製したDNA磁性体を用い水中からのレアアースイオンの回収を行い、磁性体の磁石により集積する事を試みた。最終年度は(平成27年度)は2年目に引き続きレアアースイオンの濃度を変え、様々な濃度および様々な種類のレアアースイオンの回収を試みた。また、金属イオンを集積したDNA磁性体をキレート剤で洗浄することにより再利用できることが示された。これらに加え、DNA磁性体の金属イオン選択性を分光学的な手法を用い評価した。その結果、DNAのリン酸基および核酸塩基部位が金属イオン選択性に大きく関与していることが示唆された。上記3年間の研究により以下の知見を得ることができた。 粒径数百nmのFe3O4上にDNAを担持したDNA磁性体は水中でも安定であった。DNA磁性体は銅(II)イオン、亜鉛(II)イオン、カドミウム(II)イオン、イットリウム(III)イオン、インジウム(III)イオン、テルビウム(III)イオン等の重金属およびレアアースイオンを集積するが、マグネシウムイオンやカルシウムイオンなどの軽金属イオンに関しては集積能を示さなかった。金属イオンを集積したDNA磁性体はキレート剤で洗浄することで再利用が可能であった。
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