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2013 年度 実施状況報告書

遷移金属酸化物の水素誘起高表面積化と表面機能の制御

研究課題

研究課題/領域番号 25410199
研究種目

基盤研究(C)

研究機関北見工業大学

研究代表者

松田 剛  北見工業大学, 工学部, 教授 (10199804)

研究分担者 大野 智也  北見工業大学, 工学部, 准教授 (90397365)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード多孔質材料 / 酸化モリブデン / 水素還元 / 表面積 / 異性化反応
研究概要

773Kで水素還元した白金担持三酸化モリブデンの表面積に及ぼす還元時の水素流速および還元時間の影響を検討した。水素流速および還元時間を制御することでこれまで報告例のない大きな表面積を有する酸化モリブデンの調製に成功した。具体的には、酸化モリブデンの表面積を340m2/gまで増大することができた。水素流速で表面積は変化し、水素流速が小さくなる程表面積は大となった。水素流速を小さくすると還元速度も小さくなった。白金担持三酸化モリブデンの水素還元で得られた酸化モリブデンの表面積は還元率に依存し、Mo平均価数2.0前後で最大となること、水素還元した白金担持三酸化モリブデンは0.6~3.0 nm程度の細孔を有しており、表面積と細孔容積の間にはよい相関関係があることを明らかにした。同一のMo平均価数で表面積を比較し、水素流速が小さい程表面積が大となることを明らかにした。同一のMo平均価数でも水素流速で酸化モルブデンを構成する結晶相が変化し、水素流速が小さい場合にはXRD的にはMoO相のみであったが、水素流速の増加とともにMo金属が生成した。このことから、還元時の水素流速が小さい場合にはMo金属の生成が抑制されて高表面積化していると推測した。
水素還元した白金担持三酸化モリブデンを用いてヘプタン異性化反応を行った。水素還元した白金担持三酸化モリブデンでは還元条件によらず異性化反応が95%以上の選択率で進行した。ヘプタン異性化活性は水素流速及び還元時間に依存した。異性化活性は水素流速によらずMo平均価数2.0程度で最大となったが、最大活性は水素流速の低下とともに大となった。表面積当たりの異性化活性では水素流速の影響がみられないことから、水素流速で最大活性が変化するのは表面積の相違によるものであることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Ptで代表される貴金属は、その優れた特性のために広範囲に触媒成分として使用されているが、高価で資源的な制約があるという問題がある。このため、非貴金属系高機能触媒の開発・設計は重要な研究課題の一つである。遷移金属系材料も貴金属と類似の触媒性能を示すが、その性能は貴金属に比べて低い。この問題を解決する方法として高表面積化と表面機能の制御がある。
白金担持三酸化モリブデンを773Kで水素還元して表面積に及ぼす還元時の水素流速および還元時間の影響を検討した。その結果、水素流速および還元時間を制御することで酸化モリブデンの表面積を340m2/gまで増大することができた。この表面積は遷移金属酸化物としてはこれまで報告例のない大きな値である。また、水素還元した白金担持三酸化モリブデンのヘプタン異性化特性を評価し、この触媒では異性化が高い選択率で進行し、活性は表面積とともに増大することを明らかにした。これらの成果は、貴金属代替触媒の開発・設計に遷移金属酸化物の高表面積化が有効であることを示しており、当初の目標を十分達成している。

今後の研究の推進方策

高表面積酸化モリブデンは、三酸化モリブデンが水素ブロンズHxMoO3を経由して還元する場合に生成する。したがって、HxMoO3を出発物質に用いれば白金が存在しなくても高表面積モリブデン酸化物が得られるはずである。そこで、白金担持三酸化モリブデンで得られた平成25年度の成果を白金等の貴金属が存在しない系に展開する。具体的には、三酸化モリブデン、亜鉛、塩酸を用いてHxMoO3を調製し、これを種々の条件で水素還元し、表面積・細孔径およびアルカン異性化活性に及ぼす還元条件(水素流速、温度、時間等)の影響を検討し、高表面積モリブデン酸化物の生成における白金の役割を明らかにするとともに、貴金属を必要としない新規な二元機能触媒の設計を試みる。
水素還元した白金担持三酸化モリブデンはヘプタン異性化に高活性・高選択性を示し、二元機能触媒として機能するが、表面機能の詳細については不明な点が残っている。シクロプロパン異性化反応はBronsted酸点のみで進行することが知られている。そこで、種々の条件で水素還元した白金担持三酸化モリブデンを用いてシクロプロパン異性化反応を行い、Bronsted酸性を評価する。また、酸量および酸強度をNH3-TPDで詳細に評価する。NH3は反応性が高いためにNH3-TPD中に水素還元した三酸化モリブデンをさらに還元あるいは窒化物に変化させる可能性がある。アルゴンは化学的に不活性であるが、固体表面の酸点との間で酸塩基的な相互作用を示し、固体酸性評価のプローブとして用いることができると 報告されている。そこで、アルゴン吸着測定でも酸量および酸強度を評価する。これらの成果を基に、各種表面修飾を行い、固体酸性能向上を試みる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Physical and catalytic properties of Pt/MoO3 reduced at different H2 flow rates2014

    • 著者名/発表者名
      H. Sakagami, T. Ohno, H. Itoh, Z. Li, N. Takahashi, T.i Matsuda
    • 雑誌名

      Applied Catalysis A: General

      巻: 470 ページ: 8-14

    • DOI

      10.1016/j.apcata.2013.10.020

    • 査読あり
  • [学会発表] Formation of porous MoOx by H2 reduction of MoO3 under the controlled conditions2014

    • 著者名/発表者名
      T. Matsuda, K. Kawawada, T. Ohno
    • 学会等名
      7th Tokyo Conference on Advanced Catalytic Science and Technology
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20140602-20140606
  • [学会発表] H2 reduction of Pt/MoO3 to porous MoOx and its catalytic properties for heptane isomerization2013

    • 著者名/発表者名
      T. Matsuda, Z. Li, T. Ohno
    • 学会等名
      International Symposium an Relations between Homogeneous and Heterogeneous Catalysis
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20130804-20130809

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公開日: 2015-05-28  

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