研究課題/領域番号 |
25410199
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
松田 剛 北見工業大学, 工学部, 教授 (10199804)
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研究分担者 |
大野 智也 北見工業大学, 工学部, 准教授 (90397365)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 多孔質材料 / 酸化モリブデン / 水素還元 / 異性化反応 / 固体酸 |
研究実績の概要 |
水素還元した酸化モリブデンはヘプタン異性化に高活性・高選択性を示し、二元機能触媒として機能することを明らかにしているが、表面機能の詳細については不明な点がある。そこで、ブレンシュテド酸点で進行するシクロプロパン異性化反応を行い、異性化活性に及ぼすモリブデン価数の影響を調べた。その結果、シクロプロパン異性化活性はモリブデン価数3.0で最大となること見出した。ヘプタン異性化はモリブデン価数2.0で最大となり、反応の種類でモリブデン価数の依存性が異なることを明らかにした。 水素還元した酸化モリブデンの触媒活性はモリブデン価数に強く依存する。この理由を検討するために、昇温分解および再酸化で触媒の組成の決定を行った。その結果、モリブデン価数3.9の触媒では多くの水素を含有しており、H/Mo=0.38であった。価数の減少とともにH/Mo比は減少するが、価数1.2の触媒でもH/Mo=0.05の水素含有量を示すことを明らかにし、この含有されている水素の一部がブレンシュテド酸点として作用している可能性を示唆することができた。 シクロプロパン異性化活性がモリブデン価数に依存する理由を明らかにするために、アンモニアの昇温脱離測定を行い,固体酸性について検討した。モリブデン価数3.9~1.2の触媒では、モリブデン価数の減少とともにアンモニアの脱離量が減少し、反応結果との相関は見られなかった。水素還元した酸化モリブデンのアンモニアの昇温脱離測定では、アンモニアだけでなく、水素および水の脱離もみられ、昇温脱離測定中に吸着アンモニアと酸化モリブデンのが反応が進行していることを見出した。アンモニアの脱離量と水素および水の脱離量から見積もられる酸量は0.3~0.8 mmol/gとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ptで代表される貴金属は、その優れた特性のために広範囲に触媒成分として使用されているが、高価で資源量に制約があるという問題がある。このため、非貴金属系高機能触媒の開発・設計は重要な研究課題の一つである。遷移金属酸化物は種々の反応に貴金属と類似の触媒特性を示すことが知られているが、その活性は低い。この問題を解決する方法として表面積の増大や修飾による表面反応性の向上がある。平成25年度の研究で、水素還元条件の制御により表面積300m2/gを有する酸化モリブデンの調製に成功し、この材料が従来の触媒では困難なヘプタン異性化に高い性能を示す触媒であることを明らかにした。平成26年度は、この材料の表面固体酸性の評価を中心に行い、ヘプタン異性化とは異なりシクロプロパン異性化に対する活性はモリブデン価数3.0で最大となること見出すとともに、水素還元した酸化モリブデンはかなりの量の水素を含有していることを明らかにし、この水素の一部がブレンシュテッド酸として作用している可能性を示唆した。また、モリブデン平均価数と水素含有量の関係を示した。 アンモニアの昇温脱離測定で固体酸性の評価を行い、昇温脱離測定でアンモニアだけでなく、水素および水の脱離もみられ、昇温脱離中に吸着アンモニアと酸化モリブデンの反応が進行していることを見出すとともに、モリブデン価数3.9~1.2で、酸量が0.3~0.8 mmol/gであることを明らかにした。この酸量は代表的な固体酸触媒であるゼオライトと同程度であり、水素還元した酸化モリブデンが新規な固体酸触媒となりうる材料であることを見出している。
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今後の研究の推進方策 |
アルカン異性化反応は高オクタン価基材を製造する反応として工業的に重要な位置を占めている。この反応にはアルミナ、ゼオライトなどの固体酸性担体に白金を担持した二元機能触媒が用いられている。既に申請者は、高表面積モリブデン酸化物はアルカン異性化に活性を示すことを見出している。そこで、Pt担持三酸化モリブデンの水素還元で得られた高表面積酸化モリブデンをアルカン異性化反応に適用し、その触媒特性を明らかにする。表面積、細孔径分布、固体酸性と異性化特性の関係を検討し、異性化に最適な二元機能触媒を設計する。水素還元した酸化モリブデンはヘプタン異性化に極めて高い選択率を示し、しかも高い転化率でもその選択率を維持する。そこで、工業的に実施されていない重質ナフサの異性化をターゲットとして研究を実施する。 高表面積モリブデン酸化物の前駆体は水素ブロンズHxMoO3で、これが分解・還元して生成することを明らかにしている。そこで、水素含有量の異なる水素ブロンズHxMoO3を出発物質として、これら水素ブロンズの水素還元条件を詳細に検討し、表面積・細孔径に及ぼす水素流速、水素分圧、温度、共存ガス等の影響を明らかにする。水素ブロンズHxMoO3の水素還元で得られた材料をアルカン異性化に適用して、その触媒特性を検討し、代表的な異性化触媒であるPt担持ゼオライト触媒との類似点および相違点を明らかにする。これらの成果に基づき貴金属を必要としない二元機能触媒の設計に必要な条件を検討する。
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