研究課題/領域番号 |
25410204
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
佐藤 光史 工学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10154105)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分子プレカーサー法 / 可視光応答チタニア / Cu2O / 酸化物薄膜太陽電池 |
研究実績の概要 |
本年度は,膜厚が150 nmの市販の導電性ガラスであるGaドープZnO(GZO)とAlドープZnO(AZO)基板上にp型Cu2O薄膜を形成し,作製したデバイスの光照射下での電流-電圧特性を調べた。AZO基板上に形成した膜厚200 nmの薄膜は,Cu2O,CuOと基板のピークを示した。GZO基板上に形成した膜厚200 nmの薄膜は,Cu2O,Cuと基板のピークを示した。無アルカリガラス基板上に形成した膜厚200 nmの薄膜は,Cu2O単一相だった。したがって,同一の熱処理条件下で,生成物が基板の影響を受けることが分かった。各基板上に形成した副成分を含むp型Cu2O薄膜の光照射下での電流-電圧特性を調べた。GZO基板を用いて作成したCu相を含むデバイスは,光照射による電流-電圧特性が直線状となり,発電しなかった。一方,AZO基板を用いて作製したデバイスは,短絡電流密度が2 μA/cm2,開放電圧が0.12 V,曲線因子が0.26,変換効率は,10の-5乗%台と低いものの,光起電力を生じた。 そこで基板とp-Cu2O薄膜の間に,100 nm の厚さをもつ可視光応答チタニア膜を分子プレカーサー法で形成し,変換効率の向上を試みた。基板種によらず可視光応答チタニア膜上に形成した膜は,Cu2O単一相だった。その薄膜の変換効率は,GZO基板上でも2.5×10の-5乗%を示し,AZO基板上では,1.4×10の-3乗%を示した。このように,100 nmの可視光応答チタニアをn型半導体特性をもつ導電性ガラス上に形成すると,光電変換効率が100倍以上向上することを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子プレカーサー法で形成したCu2O薄膜を導電性ガラス基板上に形成し,太陽電池として動作確認できたことは,大きな目標の一つをクリアしたことを示している。今回提案した分子プレカーサー法は、予想通り、簡便にCu2O薄膜の形成が可能で,またその半導体特性が優れていた。この優れた半導体特性を示す原因は,Cu2O薄膜内部に炭素や窒素などの不純物を含まないことが考えられる。目標は,太陽電池として動作することが目標であったことから,おおむね順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Cu2O薄膜の更なる厚膜化や配位子の設計によって、形成膜のキャリア濃度コントロールを検討する。具体的には,実際に太陽電池で使用することを想定し,光吸収が高いCu2O膜として数μmまでの厚膜化を多層化処理またはスピンコート法以外での塗布方法で検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消費税等による端数
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次年度使用額の使用計画 |
薄膜形成に必要な試薬,基板の物品費や投稿論文校閲の人件費・謝金に充てる。
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備考 |
英文で、本研究課題を含む研究内容や発表論文リストなどを簡潔に紹介している。
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