研究課題/領域番号 |
25410206
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
塩山 洋 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 研究主幹 (40357182)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノチューブ・フラーレン / 太陽電池 / エネルギー変換 / 電子受容体 |
研究概要 |
本研究では、フラーレン(C60)と同様の電子受容性のある単層カーボンナノチューブ(以下SWCNTと略記)を、各種アンテナ分子の励起状態の電子移動消光過程を通じて評価する技術の開発を目的としている。こういったカーボンナノチューブの利用によって太陽電池のセル構造の設計の自由度が増し、光電変換効率の更なる向上が期待できる。 これまでに実施した我々の研究より、SWCNTは有機系太陽電池でアンテナ分子として利用されている tris(2,2'-bypyridine)ruthenium(II)(以下ルテニウムビピリジンと略記)の発光を電子移動消光することを見出している。それを踏まえて平成25年度は、有機系太陽電池の実際に即して、水溶液中における様々なアンテナ分子の光励起状態を、各種の水溶性SWCNTを用いて実際に消光することにより電子受容性を評価した。具体的にはアンテナ分子の種類を、フェナントロリン系の配位子を持つルテニウム錯体やピレン誘導体、ローダミン系色素、チオニン系色素などに変えた場合に、その励起状態がSWCNTとどのような相互作用をするかを測定した。その結果、配位子の種類によらずルテニウム錯体の励起状態はSWCNTによって電子移動消光するが、今回検討したそれ以外のアンテナ分子はいずれもSWCNTと基底状態で電荷移動錯体を形成し、従って太陽電池での光電変換に必要な電子移動は起こっていないことが分かった。こういった電荷移動錯体の形成は、これらのアンテナ分子が芳香族炭化水素であるためにSWCNTのグラフェン表面と強く相互作用すると考えると容易に納得することができる。以上の研究成果より、今後はルテニウムビピリジンなどのルテニウム錯体系に特化して本研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、各種のアンテナ分子とSWCNTとの相互作用を評価し、ルテニウムビピリジンなどのルテニウム錯体の利用が望ましいことを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
SWCNTのうち、特定のカイラル指数を持つ金属型SWCNTと半導体型SWCNTを入手できる可能性がある。本研究開発の当初からの計画通り、今後はこれらのSWCNTを用いて平成25年度に実施したものと同様の消光実験を実施し、SWCNTの構造が電子受容性に及ぼす効果を調べる。また実際の太陽電池で使用する際に重要である高分子電解質とSWCNTとの界面構造や、SWCNTと各種イオンとの相互作用の解明についても詳細に調べる予定である。
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