研究課題
最終年度は、Li1+x[Li1/5Ti5/3]O4(LTO)の帯磁率のx依存性とその反応機構を調べた。まずx=0、即ち合成直後のLTOはTi4+(d0, S = 0)のみで構成され、本来磁性は示さない筈である。しかし帯磁率測定で60 K以下の低温で磁気異常が観測され、酸素欠損によりTi3+イオンが一部存在していることが明らかとなった。電気化学的にLiを挿入した試料については、パウリ常磁性的な挙動を示した。LTOと同じくスピネル構造を持ち、類似の材料であるLiTi2O4が超伝導転移(Tc~14 K)を示すことから、16dサイトを一部占有したLi+イオンが磁性や反応機構に重要な役割を果たしていることが分かった。なおLTOは高温でLi導電率が上昇し、固体電解質としても利用できる。しかしながら、一般的な固体電解質と比べて、焼結密度が低く、その結果みかけのLi導電率が低下してしまう、という課題があった。そこで、固体電解質内の焼結密度とLi導電率の関係をモデルを立てて計算した。LTO電極内に単純に球状の空孔が存在し、Liイオンが空孔を避けるように、伝導すると考えると、見かけのLi導電率と焼結密度はほぼ比例することが分かった。実際にLTOの焼結密度を変化させて、Li導電率を測定したところ、計算通り比例関係が得られた。固体電解質の焼結温度は1000℃以上の高温で、活物質は約800℃の低温で合成されることが多い。固体電解質と活物質を一体焼結で合成する際には、焼結温度を低下せざるを得ない。本研究の成果は、全固体電池を作製する際の指針となり得る。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Physical Chemistry Chemical Physics
巻: 17 ページ: 22652 and 22658
10.1039/C5CP02999F
ACS Applied Materials & Interfacs
巻: 7 ページ: 20314 and 20321
10.1021/acsami.5b05952