研究課題/領域番号 |
25410208
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
落合 文吾 山形大学, 理工学研究科, 教授 (20361272)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 有機無機ハイブリッド / イオウ / 光学材料 / 屈折率 |
研究実績の概要 |
新しい有機ーイオウー無機ハイブリッドモノマーである亜鉛アリルジチオカルバメート錯体と多官能チオール類とのエンーチオール反応をアクリレート類と光開始剤の存在下でUV照射することで検討した。その結果、透明で柔軟なフィルムが得られた。屈折率は亜鉛アリルジチオカルバメート錯体の仕込み比に従って向上した。また、可視光透過率は80%以上と良好であった。このモノマーならびにフィルムは光ファイバーや、ディスプレイなどの光学フィルムの屈折率調整剤などとして期待できる。ここで、前年度検討したジアリル型モノマーに加え、新たにアリルプロピル型モノマーを検討したが、本モノマーの方が溶解性に優れるために、より添加量を増やすことが出来ることが分かった。しかしながら、柔軟なプロピル基のため、および架橋密度が低いために、屈折率はジアリル型モノマーから得たフィルムの方が高かった。 また、より高反応性なモノマーとして、アクリレート構造を持つ亜鉛ジチオカルバメート錯体を合成し、その光ラジカル重合、およびエンーチオール反応を行ったところ、同様に高屈折性のフィルムが得られた。アリル型と比べて屈折率は低いものの、より短時間で硬化が進行した。 熱可塑型ポリマーとしては亜鉛ジチオカーボネート型ポリマーの合成を検討した。前年度に合成したカルド構造を持つポリマーは溶解性が低すぎて成型不可能であったため、共重合による溶解性の改善を検討した。1,4-ブタンジオールを添加した結果、溶解性はある程度向上したが、成型が可能なまでには至らなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光硬化型樹脂では目標以上の進度でさまざまな材料を得られている。ラジカル重合では硬い材料が、エンーチオール反応では柔軟な材料が得られることが分かり、機械特性が制御可能であることが分かった。高屈折性で高硬度な材料は多くあるが、柔軟な材料は少ない。当初の予想とは異なるが、柔軟性高屈折材料としての可能性を見出すことが出来、さらに多様な用途が期待できる。 一方熱可塑型ポリマーでは、目標を十分に満たすような材料が得られていない。これは予想以上に中心骨格が硬い、もしくはスタッキングなどにより結晶化しやすいためと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
光硬化型樹脂では今後さらにモノマー構造の最適化を行い、より高屈折性の材料の開発を目指す。さらに力学特性の定量的な評価を行う。高硬度型であるラジカル重合により得られた硬化物は、単独で目標の鉛筆硬度4Hを満たすのは容易でないと予想される。この場合はさらなる無機材料とのハイブリッド化により高硬度化と高屈折率化を目指す。 熱可塑型ポリマーでは、現在検討している亜鉛ジチオカーボネート型ポリマーに加え、亜鉛メルカプトチオウレタン型ハイブリッドナノ粒子のゾルゲル反応を検討する。これにより、目標達成を目指す。
|