研究課題/領域番号 |
25410209
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
西田 純一 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70334521)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 構造・機能材料 / 分子性固体 / 誘電体物性 / 有機化学 / 超分子化学 |
研究実績の概要 |
窒素原子が導入された有機π共役系化合物は、優れた電子供与性及び受容性を有する。本研究ではアミン系縮合剤の優れた反応性を利用し、他の典型元素と組み合わせた新規なπ電子構造を有する化合物を合成し、分子構造、酸化還元特性、発光特性、キャリア輸送特性について明らかにすることを行っている。 26年度においては、引き続きイミド化合物の合成と物性開拓の研究を行った。フタルイミド化合物にオリゴチオフェンを導入したドナーアクセプター型の化合物は摩擦等の力学的な刺激に際して発光を示すトリボルミネッセンス(TL)特性を与える。これらの化合物は大きな双極子を有するにもかかわらず結晶中対称心なく配列し、刺激に際して発光するだけでなく固体の色調変化を引き起こし多重応答性化合物となることをこれまでに明らかにしている。これらの研究における化合物の発光特性を強くするためにベンゼン系の置換基や縮環のナフタレン系の置換基の導入を行い、固体の発光効率の向上、TL特性の向上に今回成功した。 カルバゾールを含む化合物においてはトリフルオロメチルフェニル基を導入することで対称心ない分子配列が得られることを見出している。これらのカルバゾール誘導体はTL特性を示し、さらに燐光性の錯体を添加することで発光色を大きく変化させることができることを明らかにしている。 ジアザボロールを含む化合物の研究においては電子求引性の官能基を導入した化合物において固体発光効率が向上することを見出している。またベンゾチアジアゾールを含む化合物の研究においては優れた電子受容特性を有するn型半導体を合成することができ、薄膜太陽電池に応用可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イミド骨格を有する化合物の研究において、結晶中に対称心を持たない分子配列を好むドナーアクセプター型のπ共役系化合物を構築することができた。さらに、ベンゼン系の置換基を導入した場合にも分子集合体の様式は保持され、著しい発光効率の向上が確認された。これらの研究は、分子応答系の開発において大きな研究成果と考えられる。本研究ではさらに含窒素複素環の特性を生かした発光材料の創出や電荷輸送に適した新しい化合物の合成に成功しており、今後の有機エレクトロニクス研究をさらに発展させることができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
26年度の研究を引き継ぎ、分子内電荷移動発光を与えるドナーアクセプター型の含窒素複素環化合物を合成し、発光特性について研究を行う。含窒素複素環の電子供与性や受容性を活用したより安定な電荷移動を実現できる化合物の開発研究を引き続き行う。より大きな炭素縮環構造の合成や、それらに基づく分子集合体の固体物性について検討を行う。有機デバイス等の作成を行い、有機エレクトロニクス材料としての可能性について今後も検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行状況に合わせて、今年度に購入予定であった実験器具や試薬を次年度に購入することにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は有機合成試薬や不足している実験用ガラス器具等の購入を行います。 有機化学の文献に関する検索データベース Reaxys は、研究を進める際に必要です。この Reaxys 利用の契約を今年度も継続させて頂きたいと考えております。
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