【研究目的】本研究では、紫外線励起により、500-600 nm付近(緑〜橙色)で発振する、希土類マルチカラーレーザー媒質を創製することである。この媒質は、希土類錯体を、オルガノゲル(有機ゲル)中に高濃度(従来の溶液中と比べ、8倍の濃度)で分散させることにより実現する。 【研究実績】平成27年度は、希土類錯体 Eu(hfa)3(TPPO)2 をオルガノゲル(p-クロロフェノール+界面活性剤AOT)に分散させた系について、紫外線励起に伴う錯体の発光時間プロファイル I(t)を解析することに注力した。その結果、I(t)は励起パルス強度に依存せず、常に単一指数関数で減衰することを見出した。このことは、Eu(hfa)3(TPPO)2 がオルガノゲル中においてひも状ネットワーク近傍ではなく、溶媒中を好む分散構造を取ることに起因すると結論した。レーザー媒質として使用できるような機能発現、すなわち増幅された自然放出(amplified spontaneous emission; ASE)の実現には、Eu(hfa)3(phen)のようにひも状ネットワーク構造と親和的な錯体設計が必要不可欠であることを明らかにした。Eu(hfa)3(phen)の場合は、ゲルのひも状ネットワーク構造近傍に局在しているので、錯体の局所的な濃度が実効的に 1 M に達する。その一方、Eu(hfa)3(TPPO)2 では 3 mM程度である。Eu(hfa)3(phen)を初めとする高濃度分散構造がASEの実現には重要である。 以上の成果は、Langmuir誌、あるいはJ. Mol. Liq. 誌等に投稿し、掲載された。
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