本研究では、感温性ゲル粒子に機能性粒子として、光触媒能を持つ酸化チタン(TiO2)および磁性を持つ四酸化三鉄(Fe3O4)のナノ粒子を複合化し、それらの機能を協調的、協奏的に用いる事で高度に機能集積した有機-無機複合材料を創製する事を目的として研究を行った。まず昨年、一昨年の研究で、単ノズル微粒化法を用いて、無機ナノ粒子を複合した感温性機能ゲル粒子の調製法を確立し、得られたゲル粒子が通常の感温性ゲル粒子とほぼ同程度の温度応答性を示すこと、交流磁場印可によりゲル粒子のみを局所的に加熱可能なことを示した。また光触媒能の評価も終了している。 そこで、最終年度である今年度の研究では、これまでに得られた感温性ゲル粒子の温度応答性実験や、TiO2の光触媒実験の結果をもとにシミュレーションを行い、温度応答ポンピング有り、無しの両条件下で感温性機能ゲル粒子の光触媒能を比較検討した。その結果、一定の条件下では温度応答ポンピング有りの方が高い光触媒能を示した。次に、この温度応答ポンピングの効果を向上させるため、ゲル粒子調製時に凍結乾燥を行なうことでゲル内に多孔質構造を形成することを試みた。この結果、単位時間当たりの基質交換量を2倍程度にまで向上させることができ、簡便な方法で温度応答ポンピングの効果を改善させることができた。これにより、予定した実験はほぼ終える事ができた。 上記の結果より、本研究では3種の有機、無機材料を複合化させ、その機能を協調的、そして協奏的に組み合わせる事で、より高度に機能集積した材料の創製に成功し、更に高機能マイクロリアクターとしての応用可能性を示すことができ、研究目的を達成できたといえる。本研究によって得られた成果は、他の高活性だがハンドリングの困難なナノ粒子の応用へ道を拓き、かつ、より高度な複合材料の発展に寄与をするものと考えられる。
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