研究課題/領域番号 |
25410214
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
平岡 一幸 東京工芸大学, 工学部, 教授 (50267530)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 液晶エラストマー / 液晶 / 高分子 / フィルム型ディスプレイ / 液晶ディスプレイ / 人工筋肉 / アクチュエーター / 高分子液晶 |
研究実績の概要 |
電傾効果が発現するキラルスメクチックA(SmA*)相を有する液晶エラストマーに着目し、「コレステロール誘導体をメソゲン基とする側鎖型液晶エラストマー」ならびに「Bibenzoateをメソゲン基とする主鎖型液晶エラストマー」を対象として、外場(電界・温度)による分子配列と形状の変化を検討した。主鎖型液晶エラストマーの変形については特許出願を行った。さらにNMRを用いて液晶の分子ダイナミクスの検討も始めた。主な結果は以下の通り。 1. 側鎖型液晶エラストマーの検討:一軸応力下架橋により一軸配向したSmA*エラストマーが得られた。等方相を含む昇降温後も配向方向を維持していることを確認した。 2. 電界誘起変形:上記の1.で得られた試料において、SmA*相において+x方向の電界では+y方向への、-x方向の電界では-y方向への電傾効果によるせん断変形が確認された(±1 kV/mm、±2μm)。また等方相においてx方向の±1 kV/mmの電界に対してx軸方向への±0.3 mm程度の曲がり変形が観察された。+x方向の電界では+x方向の変形が、-x方向の電界では-x方向の変形が生じ、誘電異方性ではなく分極応答に起因することが解った。 3. 主鎖型液晶エラストマーの大変形:応力印加架橋時に8.5倍延伸した試料はSmA構造を含有したサイボタクティック液晶であることが判明し、等方相⇔スメクチック相転移において5.5倍程度の可逆的・自発的伸縮が確認された。また架橋時に1.5倍延伸した試料はスメクチック層が延伸方向に配向した。 4. 液晶材料の分子ダイナミクス: 13C-NMRの共鳴ピークのプロファイル解析とスピン-格子緩和時間測定により液晶分子におけるキラリティと分子ダイナミクスの関係を研究した。骨格部やアルキル鎖炭素ではキラリティ導入の影響は確認されなかったが、不斉炭素には有意な運動性の差が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」に記載したように、ポリシロキサンを主鎖としコレステロール誘導体をメソゲン基とする側鎖型液晶エラストマーにおいて電界誘起変形が確認された。SmA*相では電傾効果によると考えられるせん断変形が確認されたが、透過光の変化の計測には至らなかった。一方、等方相の温度領域においてSmA*相で観測されたせん断変形の1000倍程度の大きさの曲り変形が確認された。この変形はディスプレイ材料としては不適だが、アクチュエーターへの応用が有望なので平成27年度は新たな展開を計画する。また主鎖型液晶エラストマーの検討では、平成25・26年度に全メソゲン型の主鎖型スメクチック液晶エラストマーを用いることで、500%以上の自発的・可逆的伸縮機能を持つ材料の開発に成功し特許出願に至った。当初の予定にはなかったが、以上の「側鎖型液晶エラストマーの電界誘起大変形試料の開発」と「主鎖型スメクチック液晶エラストマーを用いた大変形試料の開発」の2テーマを今後の研究に加えたい。また、赤外分光分析を用いた解析については大きな進展が見られず今後の検討課題として残った。以上を鑑みると、平成26年度は研究実施計画からやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き側鎖型液晶エラストマーと主鎖型液晶エラストマーを用いて、外部刺激応答について検討を進め、本年度は研究を総括する。具体的な概要は以下の5点である。 1. 側鎖型液晶エラストマー:一軸配向試料を中心にして、昇降温時の分子配列変化と形状変化、ならびに電場誘起による変形と透過光変化を観測する。特に、SmA*相に加えて等方相領域における電界誘起大変形についても検討を加えたい。 2. 主鎖型液晶エラストマー:等方相⇔スメクチック相転移を利用した大変形試料の開発を念頭にして、架橋時の一軸延伸倍率の異なる主鎖型液晶エラストマーについて、「配列方向と配列状態」ならびに「自発変形挙動と分子配列」について延伸倍率依存性を定量的にまとめ総括する。特に、X線回折を用いて昇降温時の大変形に際しての分子配列変化を定量的にまとめる。加えて一軸配向試料のSmA*相における電場誘起の分子再配列と形状変化の検討も行いたい。 3. 分子ダイナミクスの検討:低分子液晶、高分子液晶、液晶エラストマーについて、誘電測定やNMRを用いてダイナミクスについて検討する。 4. 赤外分光分析を用いた解析: 平成25・26年度で得られた試料等について、赤外分光分析により秩序パラメータを求めX線回折結果との比較検討を行う。 5. 研究の総括
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品などに若干の誤算があるが、概ね計画通りに研究を推進し予算を遂行している。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗材料費などとして平成27年度(2015年度)に使用する予定である。
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