スメクチック相を呈する液晶エラストマーを用いてフィルム型液晶ディスプレイなどの刺激応答材料設計の基礎研究を行った。NMRを用いて液晶分子のダイナミクスを観測し、分子運動と刺激応答機能との関係を検討した。主な結果は以下の通り。 1.フィルム型液晶ディスプレイの研究:電傾効果を発現するキラルスメクチックA(SmA*)相を有する液晶エラストマーに着目し、フイルム型液晶ディスプレイ設計の基礎的検討を行った。試料はコレステロール誘導体をメソゲン基とする側鎖型液晶エラストマーを用いた。一軸応力下の合成により配向したSmA*エラストマーを得た。等方相を含む昇降温後も配向方向を維持していることを確認した。 SmA*相において+x方向の電界では+y方向への、-x方向の電界では-y方向への電傾効果によるせん断変形が確認された(±1 kV/mm、±2μm)。SmA*構造を有する30℃から130℃の広い温度範囲で電傾効果が現れ、フイルム型液晶ディスプレイ材料として有望であることが分かった。また等方相においてx方向の±1 kV/mmの電界に対してx軸方向への±0.3 mm程度の曲がり変形が観察された。+x方向の電界では+x方向の変形が、-x方向の電界では-x方向の変形が生じ、誘電異方性ではなく分極応答に起因することが解った。 2.主鎖型液晶エラストマーの大変形:Bibenzoateをメソゲン基とする主鎖型液晶エラストマーを試料とした。架橋反応時に8.5倍延伸した試料はSmA構造を含有したサイボタクティック液晶であり、室温から等方相の間で5.5倍程度の可逆的・自発的伸縮することを見出した。この知見をもとに2014年度に特許出願を行った。 3.液晶分子のダイナミクス研究: 固体13C-NMRの共鳴ピークのプロファイル解析とT1測定において、不斉炭素に有意な運動性の差が認められた。
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