本研究では、光アンテナ機能を持つポルフィリンポリマーナノチューブと金属ナノ粒子複合体を合成し、新たなナノ構造体の構築およびナノ材料としての物性評価を目的とした。まず、電解重合部位を導入したporphyrin (1) を常法により合成した。次に、porphyrin (1)を電解重合することでポルフィリンポリマーナノチューブporphyrin PNT (2) を合成した。porphyrin PNT (2)は、走査型電子顕微鏡 (SEM)、透過型電子顕微鏡 (TEM) およびエネルギー分散型X線分光分析 (EDS) による観察の結果、ポリマーナノチューブであることを明らかにした。そして、常法により調製したオレイルアミン保護銀ナノ粒子を、porphyrin PNT (2)に担持させることでハイブリッドナノチューブ2-Ag NPs (3) の調製に成功した。また、光学活性と電解重合部位を有するTiO2 NPsとporphyrin (1)を、電解共重合させることで、キラルポルフィリンポリマーナノチューブ - TiO2 NPs複合体 (4) を合成し、TEM観察によりハイブリッドナノチューブであることを確認した。次に、光学活性と電解重合部位を有するキラル鉄ポルフィリン (S)- (5) を合成した。そして、キラル鉄ポルフィリン (S)-5のCDスペクトルを測定したところ、240 nm付近にビナフチル基由来の正のコットン効果と、ソーレー帯に対応する400~500 nmに、微弱な負のコットン効果を観測した。さらに、キラル鉄ポルフィリン(S)-5を電解重合することでキラル鉄ポルフィリンポリマーナノチューブ (6) を合成し、TEM観察によりハイブリッドポリマーナノチューブであることを確認した。現在は、その興味深い光学特性や電子物性から、人工光合成系、有機薄膜太陽電池や色素増感型太陽電池への応用について研究を展開している。
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