酢酸ビニル共重合量が42%程度のEVAは結晶性を示すとともに、室温下においても自己修復性を示すことを確認した。修復時間(切断した試験片同士の突き合わせ時間)が長いほど、力学的な修復強度も向上する。これは、結晶が架橋点となったネットワーク構造の中で、特定の部分鎖(ダングリング鎖)の運動性が顕著になるために生じる。さらに、切断直後の表面は結晶構造が崩壊し、分子運動性が活発になることも表面の結晶状態観察から判明した。すなわち、EVAは切断直後に突き合わせると、化学反応などを全く生じなくても室温である程度の修復性を示す。ところが切断面を放置すると、表面の結晶化が進行するために自己修復性はほとんど示さなくなる。 スチレン量が24%のSBSを用いて自己修復性を検討したところ、EVAの場合と同様に、破断直後にすぐに突き合わせると自己修復性を示すことが判明した。ところが破断面をしばらく放置すると自己修復性は乏しくなる。これはSBSのミクロ相分離構造が切断時に崩壊することに起因する現象と考えられる。すなわち、切断面を放置すると、ミクロ相分離構造が再び形成される。なお、この過程で表面張力には変化が生じない。また、秩序‐無秩序転移温度以上の温度から急冷固化した試験片では、相分離構造があいまいであり、その結果、破断後の自己修復性に優れることが判明した。
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