研究課題/領域番号 |
25410223
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
渡邊 真志 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (90301209)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | しわ / 薄膜 |
研究実績の概要 |
ゴム状の基板に硬い薄膜を密着させ、面と平行に圧縮応力を加えると規則的なシワが生じることが知られている。本研究ではゴムとしてポリジメチルシロキサン(PDMS)を用い、薄膜としてステアリン酸コバルトからなるLB膜を用いて規則的なシワを形成させる試みを続けて来た。実際に実験してみると色々な問題点が出て来て、それらを一つひとつ解決して行く地道な作業が必要であった。 まず、水面上に、ち密な単分子膜を形成させないと、ゴム上に累積させている間に表面圧が変動してしまうという問題があった。これについてはステアリン酸を塩化コバルト水溶液の上に展開した後、段階的かつ長時間を掛けて徐々に表面圧を上げることで解決できた。 次にゴム状の基板に乗ったLB膜に圧縮応力を加える方法について検討した。当初の計画通り、丸めた状態のPDMSの表面にLB膜を作製した後、平らな状態にすることでLB膜に圧縮応力が加わるようにした。ここでPDMS基板を丸めるための治具は、トラフが小さいため小型でなければならず試作を繰り返したが、最終的に上手く使える物を得ることができた。 これらの問題を解決したあと、ようやくLB膜をPDMS基板に累積させる実験が出来るようになった。その結果、基板を下降・上昇させるサイクルを4往復分おこない、下降時には0.95程度の累積比で、上昇時にはほぼゼロの累積比で累積させることが出来た。つまり、形成されたLB膜はX膜であった。 このあと基板を丸めた状態から平らな状態へ戻し、原子間力顕微鏡による観察をおこなった。その結果、不均一かつ部分的ではあるがシワのような構造の画像が得られた。今後は均一でかつ試料の前面に亘るシワを得るための最適な作製条件を明らかにして行く必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LB膜の実験は初めてであったため1年目にかなりの遅れが出た。2年目である本年度になり、ようやくデータが取れる状態にまで辿り着けた。残り1年の研究期間では、今後の研究の推進方策に記載したとおり、研究を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿ってステアリン酸コバルトのLB膜の作製条件を細かく検討し、均質なシワを試料全面に作製できるようにする。また、長い基板に連続的にLB膜を累積できるように実験方法を工夫する。そのほか、LB膜の作製条件を変えて単純な縞模様以外のシワを作製する方法の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
原子間力顕微鏡のカンチレバー等、比較的高価な消耗品については、25年度末使用額との合算で購入し、H26年度の消耗品費は予定より少額に抑えることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
計画の遅れを取り戻し、本年度末までには当初の計画通りの研究を完成させるため、カンチレバー、試薬等の消耗品に使用する予定である。
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