研究課題/領域番号 |
25410230
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
坂田 眞砂代 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (60187391)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノ材料 / 酸化グラフェン / ナノシート / 磁性粒子 / 酵素担体 / 酵素活性 |
研究概要 |
本研究では、水溶液中でのトリプシン(タンパク質分解酵素)の活性能を安定化させ、長時間その活性を維持させることを目的として、トリプシン固定化ナノシートの開発を試みた。同ナノシートは水分散性が高いため回収・再利用が困難である。本年度は、ナノシートの回収・再利用を目的として、まず、酸化グラフェン (GO) ナノシートを磁性化し、得られた磁性化GOシートにトリプシンの修飾を試み、得られた合成物の特性を評価した。 1) 合成されたトリプシン修飾磁性化GOシートの物性評価は、AFM・TEM観察、SQUID測定などにより行った。その結果、粒径が10 nm 前後の酸化鉄微粒子がナノシート表面に均等に修飾されていることが観察できた。また、元素分析およびIR測定等により、シート表面にトリプシンも化学修飾されていることも確認できた。 2) 同磁性化ナノシートは、磁石を近づけると引きつけられたため、磁性があり、かつ磁石等で回収できることが確認できた。さらに、SQUID法により、種々の磁性化GOシートの磁化を測定した結果、酸化鉄微粒子修飾量が多いほど超常磁性が強いことがわかった。 3) 同磁性化ナノシートに固定化されたトリプシン (約200 μg/mL) の活性能 (37℃でのカゼイン分解能)をフリーのトリプシン(200 μg/mL)の活性能と比較した結果、フリーのトリプシンの80%程度の活性を保っていることを確認できた。 以上の結果より、トリプシン-磁性化GO シートは、表面が均等に磁性化されており、磁石での回収も容易であり、酵素固定化担体としての再利用が期待できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) ナノシートの設計と調製:酵素担体として選択した酸化グラフェンナノシートが予想以上に水への分散性が高く、通常の遠心分離法では回収が困難であったため、ナノシートの磁性化を試み、磁石等で容易に回収できるシート担体の調製に時間を費やした。 2) トリプシン固定化GOナノシートの調製:磁性化シートへの酵素(トリプシン)の固定化は順調に進み、共有結合法による固定化法を確立できた。 3) シートの物性評価および表面観察:化学的・物理的評価法の確立までは、おおむね達成できた。シート表面上に、トリプシンおよび磁性ナノ粒子が均等に固定化されていることが確認できた。 4) 同シートの酵素活性能の詳細な評価ができなかったが、同シートに固定化されたトリプシンの酵素活性は維持されていることは確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
1) ナノシートの再設計:ナノシートの性能評価実験の結果をもとに、ナノシートの化学的・物理的構造を改良し、トリプシンを固定化するために最適なナノシートの厚さや幅などのナノサイズを決定する。とくに、GOナノシートの超音波処理条件を詳細に検討し、トリプシンの固定化に最適なシートサイズの製造法を確立する。 2) GOナノシートへのトリプシン導入量の確立:トリプシンの活性を維持可能なナノシートへの最適な導入量を絞り込むため、トリプシンの導入条件のトリプシン濃度および処理時間などを確率する。 3) 固定化トリプシンの酵素活性評価:固定化トリプシンの酵素活性能の熱, pHおよび時間安定性について詳細に調査し、機能性を評価する。 4) 特許出願と成果発表:トリプシン固定化ナノシートの調製法に関して特許を出願後、国際学会および国内学会での成果発表と技術情報交流を行い、吸着剤の応用法について検討する。
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