本研究では、水溶液中でのトリプシン(タンパク質分解酵素)の活性能を安定化させ、長時間その活性を維持させるために、トリプシン固定化ナノシートを調製し、その機能性を評価した。種々のトリプシン固定化ナノシートの酵素活性は、37℃、10分間でのカゼインの分解能 (チロシン算出量)を定量することにより評価した。酵素触媒活性は、Michaelis-Menten kineticsにより評価し、酵素安定性は、pH依存性や時間安定性をフリーの酵素と比較することにより評価した。 1) 酸化グラフェンナノシート単体へ固定化したTrpの固定化量は約1000 mg/gとなり、マイクロセルロース粒子へ固定化したTrpの固定化量の約200倍量の固定量を示した。 2) クリック反応によって固定化したトリプシン固定化ナノシートのVmaxは、フリーの酵素の約40%程度と低い活性能を示した。この理由としては、トリプシンをアルキン化処理する過程でトリプシンの酵素活性を阻害が生じたもの考えられる。 3) アミド結合によって固定化したトリプシン固定化ナノシートのVmaxは、フリーの酵素の約約60%程度と比較的高い値を示した。同固定化法は、トリプシンの酵素反応部位を阻害しにくいため、クリック反応固定化法より高い活性を維持出来たものと考えられる。 4) トリプシン固定化ナノシートは、トリプシンを常に水中に分散・安定化させることができ、この特長がトリプシンの自己加水分解を低下させ、高い酵素活性能を長時間維持できた。
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