研究課題
基盤研究(C)
希土類酸化物を主成分とするガラス系として,La2O3-Nb2O5二元系,La2O3-B2O3二元系,そしてLa2O3-Nb2O5-B2O3三元系に関する熱物性,光学特性,振動物性,構造物性を調べた.中でも25 < x < 40,59 < x < 62においてガラス化するxLa2O3-(100-x)Nb2O5ガラスについて,放射光X線回折,中性子回折のデータを元に計算機シミュレーションにより構造モデルを導いた.その結果,La-richガラスとNb-richガラスとで,Nb-O多面体の結合状態に大きな違いがある一方で,La-O多面体にはそれほど違いがないことを明らかにした.ガラス化範囲が2つに分かれ,熱特性,光学特性,密度にも違いがあることから,La3+の局所構造にも違いがあると考えられたが,実際にはその差は小さかった.このことは,La2O3-Nb2O5二元系ガラスでは,Nb-Oのつながりの有無によって,物性が大きく異なったということを意味する.ただし,それでもLa-rich組成がガラス化したということは,La3+とO2-とである程度ランダムな原子配列をすることさえできれば,La-O多面体を主成分としたガラスが形成されうると推察できる.La2O3-B2O3系の2組成(La-richガラス,B-richガラス)については,高エネルギー放射光X線回折実験と中性子回折実験から,全相関関数を導出した.さらに,Eu3+を1mol%程度ドープした希土類酸化物を主成分とするガラスについてのX線吸収微細構造(EXAFS)スペクトルを,SPring-8のBL14B2で取得した.
2: おおむね順調に進展している
La2O3-Nb2O5二元系ガラスにおいて,La3+,Nb5+,O2-が果たすガラス形成における役割を,構造学的に明らかにすることができた.また,ガラス構造と超高屈折率の間の関係を明確にし,今後の高屈折率ガラスを得る指針を提示することができた.申請していたSPring-8 BL14B2でのEXAFSの実験課題は採択され,多くの有用なデータを得た.以上の成果から,当初の研究計画は,研究目的に沿って順調に進展しているといえる.また,本研究で得られたガラスは応用の観点からも興味深かったため,研究成果を学術論文として発表しただけでなく,一般向けプレスリリースを行った.その反響は予想以上に大きく,様々な学会,セミナーなどでの招待講演をする機会を得た.
25年度と同様に,希土類酸化物を主成分とする新規超高屈折率低分散ガラスの合成とその基礎物性測定,構造解析を進める.主にLa2O3-Nb2O5,La2O3-B2O3をベースとして,三元系,四元系に拡張する.Nb2O5に対してはTa2O5やAl2O3でほとんど置換できることがわかっている.La2O3-Nb2O5系との類似点,相違点からNb5+とTa5+,Al3+の特性や構造に対する影響の違いを導き出すことが出来る.同様にLa2O3-B2O3に対してTa5+,Al3+,Zr4+,Hf4+等を添加し,構造解析と共に光学ガラスとしての評価(熱安定性,光学特性)を行う.合成したガラスについて,高エネルギーXRDをSPring-8で測定する.中性子回折については,イギリスISISでの実験課題が採択された.また,海外だけでなくJ-PARKでの測定も考慮に入れ,ビームライン担当者と実験申請準備を進める.FLNやEXAFSの実験結果をより詳細に解析するため,結晶場理論に基づくスペクトル計算を行う.計算には,25年度に計算機実験によって作成した局所構造モデルを用いる.ここから電子レベルで構造モデルの妥当性が確かめられる.
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 8件) 備考 (5件)
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