研究課題
平成25年度と同様に,希土類酸化物を主成分とする新規超高屈折率低分散ガラスの合成とその基礎物性測定,構造解析を進めた.主にLa2O3-Nb2O5,La2O3-B2O3をベースとして,三元系に拡張した.いずれの組成のガラスも可視域で無色透明であった.La2O3-Nb2O5-Ta2O5,La2O3-Nb2O5-Al2O3三元系においては幅広い組成範囲でガラス化することがわかった.とくにAl2O3添加系ガラスでは,ガラス安定性の非常に高い組成を見出した.また,密度や屈折率測定の結果から,ガラス中の電子分極率,振動子強度が組成に伴って連続的に変化していた.ここから,より高屈折率低分散ガラスを得る指針を得た.La2O3-B2O3-Nb2O5三元系では高屈折率を保ったままさらなる低分散化に成功した.La2O3-B2O3系ガラスにおいては,Bはもはやネットワークを組んでおらず,平面BO3構造が孤立して存在していることが,ラマン散乱測定から確かめられた.さらに新たにLa2O3-Ta2O5-Al2O3三元系においても幅広いガラス形成を確認した.基本的な物性はNb2O5含有系と同じ振る舞いを示したが,Nb2O5系よりもさらに低分散になることがわかった.以上,新たに得られた新しい希土類酸化物ガラスについて,SPring-8で高エネルギーX線回折,イギリスラザフォードアップルトン研究所で中性子回折実験を行い,高いQ値まで統計精度のよい構造因子S(Q)を得た.
2: おおむね順調に進展している
今年度は,新たな三元系ガラスを得ることと,それらについて構造解析の実験を進めることが大きな目的であった.ガラス合成については,当初予定していたよりも多くの新しい組成のガラス化を確認した.また,構造解析の実験では,X線,中性子回折だけでなく,ラマン散乱などの分光学的実験を行うことができた.現在はそれらをもとに計算機シミュレーションを行っており,おおむね研究計画通りに順調に進展しているといえる.
最終年度となる本年度は,これまでの物質探索の結果を元に,引き続き,ガラス合成,放射光X線・中性子実験,計算機実験を進める.密度,酸素配位数,酸素多面体の形状,酸素多面体の結合角度,イオン間結合距離,結合強度,各イオンによる電子供与性など,これまでに新ガラスに対して得られた多様な情報から,各イオンの空間分布と化学状態に注目することで,希土類酸化物ガラスのガラス形成の起源を電子,原子レベルで理解する.
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