研究課題
本研究では,これまでガラス化しないとされていた希土類酸化物を主成分とした組成のガラスを合成し,その光学特性の評価と構造解析を行った.ガス浮遊炉を利用した無容器法によって,La2O3を主成分としたLa2O3-Nb2O5系ガラス,La2O3-B2O3系ガラスの合成に成功した.いずれのガラスも屈折率が1.9以上の高い値を有しており,かつ非常に小さな波長分散特性を示していた.例えばLa2O3-N2O5系ガラスでは,光学特性や熱特性を向上させる点で,第3成分としてTa2O5やAl2O3,ZrO2などが有効であることがわかった.また,物性データから得られた光学的パラメータや,NMRやラマン散乱などの構造解析から得られた構造情報から,これらの希土類酸化物を主成分とするガラスは,その特性の起源や形成メカニズムにおいて,ネットワークといった従来の考えでは捉えられないことを明らかにした.とくにLa2O3-B2O3ガラスにおいては,B2O3-rich組成では従来型ホウ酸系ネットワークガラスであったのに対して,La2O3-rich組成では,平面型BO3ユニットが完全に孤立しており,La3+とランダムに分布することで非晶質状態を形成していることを,実験的に明らかにすることができた.本研究で得られた希土類酸化物を主成分とするガラスは,超高屈折率低分散という光学応用上重要な特性だけでなく,従来のガラス形成則から大きく逸脱している点で,ガラス科学の幅を拡げるものである.
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 7件) 備考 (1件)
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