現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,【1】中性子反射率法による電極/電解質界面構造の計測手法確立,【2】空間電荷層・ 電気二重層における現象解析,【3】空間電荷層・電気二重層と電池性能との相関解明,を目指して以下の6項目を進めている.(i)理想二次元電極/電解質界面の構築,(ii)電極/電解質界面の電気化学特性評価,(iii)中性子線・X 線を用いた界面イオン分布のその場観察,(iv)TEM観察によるex-situ 界面観察,(v)空間電荷層・電気二重層の制御と反応解明,(vi)界面現象と電池特性との相関解明.高エネルギー密度,高速,高安全性を実現する蓄電デバイスの界面制御指針を構築する.このうち,平成25年度は主に(i)-(iv)について実施,測定手法を確立したうえで,26年度以降に(v)(vi)を加速し,機構解明を目指すことを計画した.平成25年度は,「研究実績の概要」のとおり,中性子反射率実験に必要な大面積の薄膜試料を作製したうえで,高品質の中性子反射率データを獲得することに成功した.さらに電池作製時のデータについては解析プロセスも構築し,空間電荷層形成を検出できた.充放電反応時の中性子反射率解析についても,解析が進んでおり,他の解析手法の結果と合わせた妥当性を検証しているところである.これより反射率解析については計画通り解析手法の確立にむけて進展している.一方,TEM観察については,薄膜試料にダメージを与えない低温での観察試料作製に課題があり,観察にいたっていない.以上より,「おおむね順調に進展している」.
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今後の研究の推進方策 |
界面現象と電池特性との相関解明.高エネルギー密度,高速,高安全性を実現する蓄電デバイスの界面制御指針を構築するため,平成26年度以降は以下の課題に取り組む必要がある.いずれも研究実施計画で示した実施項目であり,これらを着実に進めることが目的が達成されると考える.(i)理想二次元電極/電解質界面の構築:電極系をオリビン,スピネル,層状岩塩型正極に展開する.正極は電池の限界性能を決定づけるが,表面皮膜の形成,電極溶出など複雑な界面反応を有する.初年度に構築した反射率解析技術に基づいて着実に進める.(ii)中性子線・X 線を用いた界面イオン分布のその場観察:(a)異なる材料系,(b)膜厚が異なる電極膜,(c)酸化物積層電極のイオン濃度分布解析を行う.イオン移動の向き,空間電荷層・電気二重層の厚みの違いなどから,空間電荷層・電気二重層における現象解析を進める.(iii) TEM 観察による ex-situ 界面観察:電池動作前後の界面構造を観察し,反射率解析にフィードバックする.(iv) 空間電荷層・電気二重層の制御と界面反応解明:積層する酸化物の組成,膜厚により,空間電荷層内のイオン濃度,傾斜や空間電荷層の厚みの制御を試みる.X 線回折や反射率, 吸収分光測定から観測される違いとの相関性を検証する.定量的な評価として,ホール測定からキャリア密度を,インピーダンス測定から誘電率を求め,空間電荷層内のイオン濃度分布や厚みをシミュレーションすることを並行し,空間電荷層の現象を解明する.
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