研究課題/領域番号 |
25410239
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
角野 広平 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 教授 (00356792)
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研究分担者 |
若杉 隆 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 教授 (40222400)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 非酸化物ガラス / 硫化物ガラス / カルコハライドガラス / ガラス形成 / 分相 / 赤外透過材料 / カルコゲン化物ガラス / 結晶化 |
研究実績の概要 |
1.ガラス形成系の調査と基礎物性および光学特性の調査 Ga2S3-GeS2系およびGa2S3-Sb2S3系に第3成分としてCsClを導入した硫化ハロゲン化物系でガラス形成を調査し、得られたガラスの基礎物性および光学特性を調べた。 Ga2S3-GeS2系では、GaS1.5が20-40 mol%(GeS2が60-80 mol%)の範囲でガラスが形成され、それにCsClを30 mol%程度まで導入することができた。CsClの導入によってガラス転移温度は低下し、密度は増加した。また、熱的安定性は、CsClが10-20 mol%で最も向上した。屈折率は増加した。可視域での透過限界波長が短波長側にシフトし、約450 nm程度まで透過するガラスが得られた。 Ga2S3-Sb2S3系では、GaS1.5が10-30 mol%(SbS1.5が70-90 mol%)の範囲でガラスが形成され、それにCsClを20 mol%程度まで導入することができた。CsClの導入によって、密度は減少し、屈折率は低下した。このガラス系は、赤外の透過限界波長が、13 um程度であり、大気の窓(~13 um)をカバーすることができるため、赤外透過ガラスとして有望であることがわかった。 2.GeS2-Sb2S3-CsCl系ガラスの結晶化挙動の調査 GeS2-Sb2S3-CsCl系ガラスにおいて、結晶核形成を促進するはたらきがある添加成分の探索を行った。Gd2S3を添加した系では、ガラス作製時に分相が誘起され不透明となった。これに対して、ZnSを添加したガラスでは、熱処理による結晶化過程が促進されることがわかった。さらに、生成した結晶にはZnが含まれないことから、ZnSが核形成剤として作用していることが示唆された。また、作製された結晶化ガラスのビッカース硬度は高くなり、結晶化によって機械的な強度が向上することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、前年度に引き続き種々のハロゲン化物を導入した系でガラス形成を調査することを計画していたが、当初考えていた多くのハロゲン化物での調査はできなかった。しかし、Ga2S3-GeS2-CsCl系ガラスでは、可視域の広い範囲で透光性を有するガラスが得られることがわかった。さらに、予備的な実験で、このガラス系に希土類イオンなどを添加することにより、これまでにない可視発光材料が得られる可能性があることも明らかになった。 また、Ga2S3-Sb2S3-CsCl系のようにGeS2やAs2S3を含まない系で良好な熱的安定性を有するガラスが得られた。このガラス系には、GeO2不純物が含まれないため、赤外透過限界波長はGeS2を含むガラスに比べ長波長にシフトした。これは、実用面でも重要な特性であり、産業財産権(特許)の出願につなげることができた。 一方、当初予定していたラマン分光法等による構造解析については、装置不良の問題もあり、十分に進展しなかった。 GeS2-Sb2S3-CsCl系ガラスを用いた結晶化挙動の調査では、カルコゲン化物系で、はじめて結晶核生成剤としての作用が示唆される添加成分(ZnS)が見いだされるなど十分な進展が得られたと考えられる。 以上を総合的に判断すると、全体としては概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度調査したGa2S3-GeS2系およびGa2S3-Sb2S3系を基本とするガラス系を中心に、引き続き、硫化物+ハロゲン化物系でのガラス形成の調査を行う。特に前者では、可視域で良好な透過性を有することから発光材料としての可能性も念頭に入れて、希土類イオンを添加するなども含めて調査を行う。後者のガラス系では、赤外透過材料としての応用も念頭に、熱的な安定性のさらなる向上をはかるため、導入成分として、ハロゲン化物のみならず、Agなどの金属元素、SnSなどの硫化物も調査対象にする。また、軟化温度付近での粘性特性の評価などについても検討する。 次に、GeS2-Sb2S3(-CsCl)系ガラスにおけるAgのフォトドーピング挙動を調査する。このガラス系は、GeS2とSb2S3のモル比を変化させることによりバンドギャップを調整することができる。さらに、Sを過剰に加えた非化学量論組成のガラスも作製可能である。このような組成の異なる種々のガラスを用いて、バンドギャップや非化学量論性と、フォトドーピング挙動との関係を明らかにする。これにより、これまであまり報告例がなかったバルクのカルコゲン化物やカルコハライドガラスでのフォトドーピングのメカニズムについて知見を得る。また、このガラス系を基本とした硫化ハロゲン化物系で、結晶化や相分離の挙動についての調査も行う。 ガラスの構造解析については、赤外分光法などにより調査する。 平成27年度は最終年度であるため、次の研究への展開も念頭に入れて取り組む。
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