研究実績の概要 |
1.カルコハライド系でのガラス形成、ガラスの基礎物性および光学特性の調査 Ga2S3, GeS2, Sb2S3から選んだ2成分にハロゲン化物MXn(M = Cs, Ag, Ba, X = Cl, Br, I)を加えた硫化ハロゲン化物系でガラス形成や物性を調査した。ハロゲン化物の導入によってガラス転移温度が低下し、多くの場合、短波長側吸収端が更に短波長にシフトした。また、Ga2S3-Sb2S3系ガラスは、赤外透過限界波長が13 um程度で、赤外透過ガラスとして有望であることがわかった。 2.カルコハライド系ガラスにおける結晶化や分相現象の調査 GeS2-Sb2S3系ガラスについて、結晶化や分相挙動を調べた。GeS2-Sb2S3-CsClガラスでは、ZnSの添加によって結晶化過程が促進され、ZnSが核形成剤として作用していることが示唆された。また結晶化によってガラスのビッカース硬度が上昇した。GeS2-Sb2S3-AgCl系ガラスでは、ある組成範囲で分相することを見出した。このように、カルコハライド系ガラスにおいても酸化物ガラスと同様に結晶化や分相を利用したガラスの高機能化が可能になると期待される。 3.カルコハライドガラスへの銀のフォトドーピング H27年度は、ガラス形成や物性、結晶化、分相の調査に加えてガラスへの銀フォトドーピング現象についても調査した。Ge-Sb-S-CsCl系ガラスにおいて、化学量論組成に比べイオウを過剰にすることによってフォトドーピングが促進され、CsClを導入することによって抑制される。これらのフォトドーピング挙動をガラス構造の観点から説明することができた。 本研究では、主に、硫化ハロゲン化物系でガラス形成やガラスの基礎物性を系統的に調査し、構造、物性に対するハロゲン化物のはたらきについて学術的な知見を得るとともに、新規赤外透過硫化物ガラスを見出した。
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