研究課題/領域番号 |
25410240
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
清水 陽一 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20192114)
|
研究分担者 |
高瀬 聡子 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60239275)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 化学センサ / 固体電解質 / インピーダンス |
研究概要 |
環境汚染物質ガス(NOX,CO2等)濃度測定用センサの開発は大きく遅れている。これは複雑なセンサ素子構造と検知法に起因する。申請者らは,固体電解質(Liイオン導電体)をインピーダンス信号変換器(トランスデューサ)と種々のレセプタ(アルカリ炭酸塩、パイロクロア型酸化物)を組み合わせた新規なシンプルなガス検知方式について検討することを目的とした。 近年、大気環境分野においては、窒素酸化物、炭酸ガスなどの燃焼排ガスが、光化学スモッグや地球温暖化を発生させる原因として深刻な問題となっている。現在これらに対処すべく、様々な技術として、材料、デバイス、システムなどが検討されており、その中でも環境汚染ガス濃度測定センサは最も注目されている化学デバイスである。 従来、酸化物/固体電解質の接合による混成電位方式窒素酸化物センサを構成できることが報告されているが、非平衡状態を検知するためドリフトの問題,原理上,検知極の他に対極と参照極が必要であり複雑な素子構造にならざるを得ない等の課題があった。そこで,これらの課題を解決するために,本研究では固体電解質をインピーダンス信号変換器とするシンプルな素子を検討したところ,固体電解質の交流インピーダンス変化を検知信号とする新型のNOxセンサを構築できることを見出した。本センサは,従来固体電解質センサで不可欠であった参照極等が披検ガス中に一切不要,対称性の素子構造によりドリフトの課題を解決,レセプタに絶縁体も利用可能という,画期的な構造的特徴を有する新しい全固体デバイスである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固体電解質にLiイオン導電体(Li-Al-Ti-P-O系)トランスデューサとレセプタとしてアルカリ炭酸塩を組み合わせたセンサデバイスが、NOxに応答するというこれまでにない新規な現象を見だした。さらに、パイロクロア型複合酸化物がNOxセンサ用レセプタとして有効なことを見だした。また、パイロクロア型酸化物レセプタ系センサは、インピーダンスの挙動がエチレンに対して逆の応答を示し、炭化水素系センサデバイスへの展開が可能なことを見だした。 固体電解質トランスデューサとして、化学的に安定で低温でも高いイオン導電性を示すNa-Dy-Si-O系固体電解質の合成法に成功しており、本センサへの応用添加が可能である。 応答機構については、固体電解質トランスデューサが、カチオン導電体とアニオン導電体の場合でインピーダンス応答が逆転することよりレセプタへのガスの吸着による電荷移動によるものと考えられるが、機構については定性定量的検討を今後加える予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究で提案するセンサデバイスには、レセプタが、導電性電極としての機能を要しないと考えられるので、従来はほとんど適応されることがなかった電気的に絶縁体もレセプタに応用可能であると考えられる。特に、ゼオライトなどの触媒活性の高い絶縁体や高抵抗を示す種々の酸化物などへの材料選択の幅が広がるという特徴を併せ持つ。今後は、これらの新型のレセプタの適応について検討する。 固体電解質のトランスデューサ機能も重要であるので、高伝導性電解質の応用、固体電解質厚膜・薄膜の適応を検討する。 この様な固体電解質のトランスデューサ機能を用いる新型化学センサの応答機構について、吸着状態をIRなどにより検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
学会等が近郊で多くあったため、旅費が必要以上に掛からなかったため。 また、今年度は謝金を要する実験依頼が必要でなかったため。 繰越金は、試薬などの購入に充て、研究材料の種類を増やしていくために活用したいと考えている。
|