研究課題/領域番号 |
25410244
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
露本 伊佐男 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (60282571)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 導電性酸化物 / ホウ酸 / 非晶質 |
研究概要 |
非晶質のホウ酸リチウムを900℃以上の水素中で還元焼成することで,金属光沢のあるガラス状で低い抵抗率を示す新しい導電性物質が生成することを見出していたが,平成25年度はこの導電性ホウ酸リチウム還元体の合成条件を確定した上で,ホウ酸ナトリウムなどの類縁化合物で同様の導電性物質が生成するかを精査することを目的とした。 非晶質ホウ酸リチウムでは,リチウム/ホウ素比1~3の範囲の原料を酸化ケイ素,酸化アルミニウムを原料とする焼成ボートで還元焼成することで,低い抵抗率を示す導電性物質が得られることを確認し,合成条件を確定した。白金ボートなどを使用した時は導電性物質が生成しなかったことから,焼成ボートの成分に含まれる酸化ケイ素,酸化アルミニウムが導電性物質の生成に寄与していることを新たな知見として得た。 ホウ酸ナトリウムについて,焼成条件を950℃,水素中,2時間に固定し,生成物を確認したところ,ホウ酸ナトリウムに酸化ケイ素,酸化アルミニウム粉末を混合した場合に黒色,かつ金属光沢を有し,良好な導電性を有する酸化物が生成した。粉末X線回折では非晶質であり,抵抗率の温度依存性は金属的であった。ホウ酸ナトリウムだけを原料にした場合では導電性物質が生成しないことがわかり,導電性物質の生成には酸化ケイ素,酸化アルミニウムが必要であることが分かった。また,ホウ酸のみ,水酸化ナトリウムのみを酸化ケイ素や酸化アルミニウムに混合して同条件で焼成しても導電性物質は得られないこともわかった。導電性物質の生成にはナトリウム(アルカリ金属),ホウ素,ケイ素,アルミニウムが必須であることを新たな知見として得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホウ酸リチウム塩だけでなく,ホウ酸ナトリウム塩に関しても水素雰囲気中で還元焼成することで,導電性物質が生成することを見出した。さらに導電性物質の生成条件について精査を加えた結果,ホウ酸ナトリウムだけでなく,酸化ケイ素,酸化アルミニウムが導電性物質の生成に必要であることを見出した。研究目的の通り,導電性物質の生成条件を解明することに成功した。 生成した導電性酸化物の電気伝導率を直流4探針法で測定したところ,温度上昇とともに電気伝導率は低下し,電子伝導性であることがわかった。まったく新しいバンド構造をもつ電子伝導性酸化物であることを示唆している。導電性酸化物の生成条件によっては,温度依存性が逆の半導体的になることもわかり,調製条件により導電メカニズムが変化することも知見として得た。 粉末X線回折の測定結果より,導電性物質は非晶質であることがわかり,新しい導電性ガラスとしての応用が強く期待できる。特に焼成後,粉末として析出するのではなく,塗膜化するので,応用面でのポテンシャルは高いと考えられる。 また,本来の目的の達成に加え,タングステンボートに載せて還元焼成をした場合,ナノメーターオーダーの径を有するウィスカーが成長することを見出した。水素雰囲気中でタングステンを混ぜて焼成することにより,新しいナノ材料の開発も期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進捗に伴い,非晶質の複合酸化物が導電性を示していることが明らかになったので,構造解析に関しては非晶質構造に対応した方策をとっていく予定である。 ホウ酸リチウムとホウ酸ナトリウムでは,ホウ酸ナトリウムの方が導電性物質を生成しやすいことを見出したので,ホウ酸リチウムとホウ酸ナトリウム両方について,今後の実験を進めていく。導電性物質はきれいなガラス状塗膜として生成するので,光学的性質と電気的性質の評価をまず塗膜を対象にして進め,光学的性質と電気的性質の相関を明らかにした上で,薄膜化を検討する予定である。
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