研究課題/領域番号 |
25410247
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 地方独立行政法人大阪市立工業研究所 |
研究代表者 |
丸山 純 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 環境技術研究部, 研究主任 (80416370)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 炭素材料 / コバルトフタロシアニン / 熱分解 / 走査型トンネル顕微鏡 / 水電解 / 水素発生 / 触媒 |
研究概要 |
コバルトフタロシアニン(CoPc)を熱分解させて得られるナノ粒子状の炭素材料における、CoPcをはるかに上回る水素発生触媒活性の発現機構を解明するため、原子レベルでCoPcの熱分解挙動を解明し、熱分解進行度と水素発生反応機構の関係を解明することを計画している。本年度は、熱分解進行度が異なり、かつ、単分子層レベルで薄いCoPc由来炭素薄膜を高配向性熱分解黒鉛(HOPG)基底面上に作製し、走査型トンネル顕微鏡(STM)観察により原子レベルで熱分解挙動を解明することを計画した。 STM観察は微小な振動にも影響を受けるため、振動の少ない設置環境の選定が重要となる。当初想定していたよりは難航したものの、基準となるHOPG基底面の観察が可能となった。次に、CoPcの昇華、析出、熱分解によりHOPG基底面上に炭素薄膜を作製し、STM観察を行った。原子レベルでの観察には至らなかったものの、数ナノメートル規模の規則的な島状構造が観察された。 STM設置環境選定と並行して、ナノ粒子状のCoPc由来炭素材料において、熱分解過程を2段階とすると、2段階目の熱処理温度に依存して、Co周囲の原子配置が変化し、それに伴って水素発生触媒活性が変化することが、X線吸収微細構造の測定結果と水素発生電流測定の結果から明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
STM設置環境選定に当初想定していたより難航したため、平成25年度に計画していた熱分解CoPc単層膜の作製、そのSTM観察は達成できなかった。一方、原子レベルでの観察には至らなかったものの、数ナノメートル規模の規則的な島状構造が観察された。CoPc熱分解過程に関する新たな知見を得ることができた。また、ナノ粒子状のCoPc由来炭素材料において、Co周囲の原子配置と水素発生触媒活性の関連性を見出したことから、CoPcの熱分解進行度と水素発生反応機構の関係を解明する上で進展が見られた。
|
今後の研究の推進方策 |
熱分解進行度の異なる熱分解CoPc単層膜の作製を、引き続き熱処理パラメーターの調節により試みる。計画通りに進まない時の当初の対応策である、原料、熱処理条件両面の精密化も実施する。得られた熱分解CoPc単層膜のSTM観察を行い、CoPc熱分解挙動の原子レベルでの解明を目指す。あわせて、規則的な島状構造についても詳細な分析を試みる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度における熱分解CoPc単層膜作製のための熱処理条件精密化に用いる物品の購入に備えるため。 当初計画していた消耗品費に加算して使用する。
|