研究実績の概要 |
層状岩塩型複合酸化物について、最終年度では平成26年度までのデータの補足をしつつ、酸素雰囲気下700℃熱処理後の反応図構築に取り掛かった。擬三元系Li(Ni-Co-Fe) 0.8Ti0.2O2反応図をX線回折による相同定と組成分析より作成した結果、大気雰囲気で焼成した既報の反応図と比べて層状岩塩型構造の単一相領域が拡大した。また、電極評価の一例としてLiNi0.4Co0.2Fe0.2Ti0.2O2の初期放電容量は117 mAh/gとなり、50サイクル後の放電容量維持率は97%となった。酸素雰囲気下650℃で得られた同組成試料では初期放電容量が112 mAh/g、50サイクル後の放電容量維持率が85%であったことから、静電噴霧熱分解法により得られる粉体は、酸素雰囲気下700℃焼成が適していることになる。今後はTi置換量を変えた擬三元系反応図を作成し、組成・構造・物性の相関をまとめたい。 平成26年度より取り組んでいるオリビン型Li(Fe,Mn,Co)PO4では層状岩塩型化合物の成果を踏まえLi(Fe,Mn,Co)0.97Ti0.03PO4について反応図を作成した。Ar(97%)-H2(3%)混合ガス雰囲気下600℃で2時間焼成した試料群は、Feを多く含む組成でオリビン型構造の単一相を示し、Ti固溶により充放電サイクル特性の、Co10%置換体で初期放電容量の向上を確認した。 平成27年度では充放電時のMn溶解やヤーン・テラー歪みによる構造変化を抑制することを目的にスピネル型LiMn2O4にも着目し、Li(Ni-Mn-Ti)2O4系酸化物の探索を進めた。大気雰囲気下700℃で3時間熱処理したLiNi0.5Mn1.5-xTixO4では0~x~0.5において単一相が得られ、0.1Cにおける電極評価では無置換体よりも高い充放電電位(4.7V)を示した。dQ/dV曲線から、Ti量の増加に伴いNi2+/4+の酸化還元反応が高電位側にシフトする傾向が見られ、金属酸素間の結合力が原因と考えられた。なお、x=0.2においては、放電容量、維持率ともに優れた値を示した。
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