| 研究課題/領域番号 |
25420001
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| 研究種目 |
基盤研究(C)
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| 研究機関 | 北海道大学 |
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研究代表者 |
東藤 正浩 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10314402)
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| 研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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| キーワード | バイオメカニクス / ラマン分光 / 関節軟骨 / コラーゲン / プロテオグリカン |
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| 研究概要 |
大腿骨と脛骨，膝蓋骨で構成される膝関節は，屈伸運動機能だけではなく，関節軟骨において，下肢に生じる衝撃エネルギーを吸収する．変形性関節症は労働やスポーツ，外傷などによる過剰な力学的負荷が原因で発症する関節軟骨の退行性疾患であり，高齢者の日常活動性および生活の質を阻害する最も多い要因の一つである．高齢化が進む中で，この病態を十分に把握し，適切な診断を行うことが求められている．
単一の振動数を持つ励起レーザーを，固有の分子振動数νを持つ物質に照射すると，レイリー散乱，ストークス散乱，アンチストークス散乱が観測される．入射光とストークス散乱光の振動数の差νをラマンシフトと呼び，物質特有の値を取るため，物質の特定やその特性を知るためにラマン分光測定が利用される．そこで本研究では，コラーゲン線維，エラスチン，プロテオグリカンなど高分子から構成される膝関節軟骨の力学特性評価法として，ラマン分光法による成分解析を提案する．ラマン分光法は，水分の影響を受けにくいという特徴を持ち，有機および無機両成分の成分解析が可能である．これらにより，ラマン分光法は生体材料の測定に適している．
平成25年度では，ウサギ膝関節の脛骨顆より膝関節軟骨試験片を採取し，顕微レーザーラマン分光装置によりラマンスペクトル解析を行い，力学的負荷に対するラマンスペクトルの応答について調査した．その結果，ラマンスペクトル解析によって，膝関節軟骨に含まれる成分の中で，PyranoseおよびHydroxyprolineでのラマンシフトが力学的負荷に対して応答性を示すことが確認できた．この結果から，ラマン分光法により，軟骨組織内のこれらの成分に関してラマンシフトと力学的負荷との間の関係を定量化することが可能となれば，非侵襲での軟骨力学特性評価が可能になると考えられる．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究達成度について「おおむね順調に進展している」と判断する．理由として，平成25年度研究計画「１．ラマン分光法を利用した関節軟骨の分子スケール構造解析」については，北海道大学共用実験設備である顕微レーザーラマンマイクロスコープシステムを基本装置とし，膝関節軟骨に対する計測系を構築した．これを用い，実際に関節軟骨内の構成成分であるコラーゲン，プロテオグリカン等のラマンスペクトルを獲得することが可能となった．また，より信頼性の高いデータの取得のため，レーザー波長，レーザー出力，レンズ倍率，照射時間など，最適な測定条件を選定した．また研究計画「２．加齢膝試料ならびに人工変性膝試料の作製」については，加齢膝軟骨ならびにエタノール浸漬による化学変性膝軟骨の作製手順を確立した．またあわせて，落下型衝撃試験機による力学的変性軟骨の作製も準備中である．また研究計画「３．圧縮負荷時ラマン分光解析による関節軟骨分子スケール力学解析手法の開発」については，圧縮負荷状態でのラマンスペクトル測定を行うため，顕微レーザーラマンマイクロスコープシステム内に設置可能な小型圧縮負荷装置を作製した．湿潤状態での計測を可能とし，またレーザー照射ならびにラマン散乱計測に支障のないよう設計されている．実際に本装置を用い，圧縮負荷時における関節軟骨のラマンスペクトルを計測できたと同時に，無負荷時と比較し，そのラマンスペクトルに圧縮負荷に応じた変化が見られることを確認できた．
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| 今後の研究の推進方策 |
平成26年度については，下記に示す内容で研究を遂行する．
ラマン分光計測により得られたコラーゲン/プロテオグリカン力学応答データから，関節軟骨の階層構造に基づく，軟骨コラーゲン/プロテオグリカン複合構造体力学モデルを考案する．固有の材料特性を有するコラーゲンおよびプロテオグリカンを模擬するミクロ構造体要素の配置ならびにそれらの力学的結合条件を，任意の材料特性を実現する最適設計問題として解く． 実測されたコラーゲンおよびプロテオグリカンの力学挙動データおよび圧縮負荷による巨視的変形特性データをもとに，材料パラメータ同定を行い，軟骨変性指標としての有効性を検討する．
また，提案した関節軟骨コラーゲン/プロテオグリカン複合力学モデルを用いた軟骨変性度と各材料パラメータの関係をデータベース化し，コラーゲン/プロテオグリカンラマン分解析データからマクロな軟骨力学特性を逆推定する．化学処理による変性サンプルおよび加齢サンプルによる比較検討を行い，関節軟骨微視構造特性に基づく軟骨機能診断手法としての有用性を確認する．
また並行して，レーザー透過可能な円柱状のガラス製インデンタ（直径3mm）を設計し，ラマン顕微鏡対物レンズ先端に組み合わせることで，圧縮負荷時の関節軟骨の，よりin vivoの状態に近いラマン分光計測を実現する手法を考案し，臨床への応用について可能性を検討する．
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| 次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画では，研究計画「３．圧縮負荷時ラマン分光解析による関節軟骨分子スケール力学解析手法の開発」において，ラマン顕微鏡用水浸対応対物レンズを購入ならびにガラス製インデンタを作製し，生体内での測定を想定した実験系を構築する予定であったが，軟骨成分の複雑なラマンスペクトルが観測されたため，より詳細な調査を行うため，圧縮負荷状態でのラマンスペクトル測定を目的とし，顕微レーザーラマンマイクロスコープシステム内に設置可能な小型圧縮負荷装置を作製した．湿潤状態での計測を可能とし，またレーザー照射ならびにラマン散乱計測に支障のないよう設計されている．実際に本装置を用い，圧縮負荷時における関節軟骨のラマンスペクトルを計測できたと同時に，無負荷時と比較し，そのラマンスペクトルに圧縮負荷に応じた変化が見られることを確認できた．このため水浸対応の対物レンズの導入は次年度の研究計画に含めることとした．
次年度では，ラマン分光計測により得られたコラーゲン/プロテオグリカン力学応答データから，関節軟骨の階層構造に基づく，軟骨コラーゲン/プロテオグリカン複合構造体力学モデルを考案する．実測されたコラーゲンおよびプロテオグリカンの力学挙動データおよび圧縮負荷による巨視的変形特性データをもとに，材料パラメータ同定を行い，軟骨変性指標としての有効性を検討する．そこで本年度残額については，本手法の臨床応用を目指し，レーザー透過可能な円柱状のガラス製インデンタ（直径3mm）を設計し，ラマン顕微鏡対物レンズ先端に組み合わせることで，圧縮負荷時の関節軟骨の，よりin vivoの状態に近いラマン分光計測を実現する手法を考案し，実験的にそのあ可能性を検証する．
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