研究課題/領域番号 |
25420003
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
高橋 護 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90261651)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ダイヤモンド皮膜 / 材料加工・処理 / 表面・界面物性 |
研究実績の概要 |
本年度は,燃焼炎法によりCo-Cr合金上により確実にナノ結晶ダイヤモンド皮膜の合成を可能にするため,合成途中にCo-Cr合金の表面の温度が急激に上昇しないようにさらなる冷却装置等の改良を行った.さらに,ナノ結晶ダイヤモンド皮膜を合成するための燃料ガスとして高純度アセチレンと酸素を用い,その混合ガスに窒素を添加しCo-Cr合金上に合成を行った.ここで,ダイヤモンドを合成する前にCo-Cr合金基板の表面のスクラッチング処理を前処理として行い,この際に基板表面の粗さが変化するように処理を行った.また, Coを除去するために酸溶液による前処理を行い,ここで用いる酸溶液の種類ならびに処理時間を変化させ処理を行った.また,ダイヤモンド合成の成長核としてダイヤモンド種付けの前処理を行い,この際に用いるダイヤモンド粒子の大きさを変化させ処理を行った.さらに,燃焼炎の白心から基板表面までの距離を変化させ合成を行った.その結果,燃焼炎法によりCo-Cr基板上にナノ結晶ダイヤモンド皮膜を合成できることを確認し,ナノ結晶ダイヤモンドが合成可能な条件の最適値を求めることができた. また,改良を行った引っかき試験装置を用いてナノ結晶ダイヤモンド皮膜を施したCo-Cr合金の引っかき試験を行い,はく離が生じる限界荷重を測定し,得られた限界荷重と引っかき痕からせん断応力を求め,ナノ結晶ダイヤモンド皮膜を施したCo-Cr合金の接合強度を定量的に求めようとした.しかし,合成されたナノ結晶ダイヤモンド皮膜の接合強度が低いためはく離が発生しやすく,限界荷重を得ることができなかった.したがって,接合強度が高くなる合成条件の検討を行った. さらに,平成27年度に実施する実際の形状の人工股関節骨頭であるCo-Cr合金にナノ結晶ダイヤモンド皮膜の合成に使用する現有設備である実験装置の改良を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,燃焼炎法によりCo-Cr合金上により確実にナノ結晶ダイヤモンド皮膜の合成を可能にするため,さらなる冷却装置等の改良を行った.さらに,ナノ結晶ダイヤモンド皮膜を合成するための燃料ガスとして高純度アセチレンと酸素を用い,その混合ガスに窒素を添加しCo-Cr合金上に合成を行った.ここで,ダイヤモンドを合成する前にCo-Cr合金基板の前処理として基板表面のスクラッチング処理を行い,基板の表面粗さを変化させた.また,Coを除去するために酸溶液による前処理を行い,ここで用いる酸溶液の種類ならびに処理時間も変化させ処理を行った.また,ダイヤモンド合成の成長核としてダイヤモンド種付けの前処理を行い,この際に用いるダイヤモンド粒子の大きさを変化させ処理を行った.さらに,ダイヤモンド結晶の成長速度をコントロールできる燃焼炎の白心から基板表面までの距離を変化させ合成を行った.ここで,合成された皮膜を走査型電子顕微鏡,X線回折装置によりその結晶形状や成分等の特性を評価した.その結果,燃焼炎法によりCo-Cr基板上にナノ結晶ダイヤモンド皮膜を合成できることを確認できた.このことにより,ナノ結晶ダイヤモンド皮膜が合成可能な条件の最適値を求めることができた. また,引っかき試験装置を用いてナノ結晶ダイヤモンド皮膜を施したCo-Cr合金の引っかき試験を行い,はく離が生じる限界荷重を測定し,得られた限界荷重と引っかき痕からせん断応力を求め,ナノ結晶ダイヤモンド皮膜を施したCo-Cr合金の接合強度を定量的に求めようとした.しかし,合成されたナノ結晶ダイヤモンド皮膜の接合強度が低いためはく離が発生しやすく,限界荷重を得ることができなかった.したがって,接合強度が高くなる合成条件の検討を行った.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,接合強度が高くなる合成条件を用いてナノ結晶ダイヤモンド皮膜の合成を行い,引っかき試験装置を用いてナノ結晶ダイヤモンド皮膜を施したCo-Cr合金の引っかき試験により,はく離が生じる限界荷重を測定する.得られた限界荷重と引っかき痕からせん断応力を求め,ナノ結晶ダイヤモンド皮膜を施したCo-Cr合金の接合強度を定量的に求める.この際,ダイヤモンド皮膜が生体材料として適用可能か実験的に評価するため擬似体液に浸した皮膜と浸さない皮膜の接合強度を測定し,その変化を調べる. さらに,実際の形状の人工股関節の骨頭部分であるCo-Cr合金にダイヤモンド皮膜を施すために現有設備である実験装置の改良行う.また,ナノ結晶ダイヤモンド皮膜を施したCo-Cr合金と超高密度ポリエチレンの摺動部に発生する摩耗粉の影響を調査するため,Co-Cr合金上に合成された皮膜の耐摩擦摩耗試験を行う.ここで,試験により摩耗量,摩擦係数を算出し,ダイヤモンド皮膜の耐摩耗性を定量的に評価する.また,ダイヤモンド皮膜が生体材料として適用可能か実験的に評価するため,擬似体液中にダイヤモンド皮膜を浸すことで発生する耐摩耗性の変化を調査する.この際,擬似体液中に浸したダイヤモンド皮膜と浸さない皮膜との比較検討を行いその変化を調べる.
|