研究課題/領域番号 |
25420005
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
中村 雅史 茨城大学, 工学部, 准教授 (60302329)
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研究分担者 |
鈴木 秀人 茨城大学, 工学部, 名誉教授 (30090369)
崎野 純子 茨城大学, 工学部, 技術職員 (40272116)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 表面改質 / ダイヤモンドライクカーボン / アルミニウム合金 / 疲労信頼性保証 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,26年度に引き続き,(1)硬さの傾斜構造皮膜を作成するため,UBMS法による(1)AlCrN膜の硬さの制御法,(2)DLC膜の硬さの制御法について調査した.さらに(3)DLC/AlN傾斜構造複合皮膜被服Al合金の疲労強度信頼性保証とその要因解析を行い,以下の結果を得た. (1)平成26年度は,AlCrN膜の硬さに及ぼす成膜時のスパッタ電力の影響について調査し,各ターゲットに負荷するスパッタ電力によって硬さが6~20GPaと変化することが分かった.そこで,H27年度は前年度で最も高硬度であったスパッタ電力を用いて,更なる高硬度のAlCrN膜を作成するために,硬さに及ぼすバイアス電圧の影響を調査した.バイアス電圧を変化させて成膜した結果,AlCrN膜の硬さが20~27[GPa]と変化することが分かった.バイアス電圧を変化させることでAlCrN膜の硬度の傾斜化か可能であることが分かった.しかしながら,目標とする50GPaまでは達成できなかった. (2)DLC成膜時のバイアス電圧を変化させて成膜した結果,DLC膜の硬度は8~23GPaまで変化することが分かった.バイアス電圧を変化させることでDLCの硬度の傾斜化か可能であることが分かった. (3)DLC/傾斜構造複合膜を被服したAl合金が疲労強度が向上した要因を詳細に調べた.特に走査型電子顕微鏡による詳細なき裂発生部の観察を行った.その結果,高靭性を有するDLC膜は中間層であるAlN膜から発生する微小な割れが表面に出てくるのを遅延させる,すなわちDLC膜が疲労き裂の発生を抑制することが分かった.さらに圧縮残留応力との相乗効果によって疲労き裂の発生がさらに遅延されることによって,疲労寿命が向上することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 硬さを制御した軟~硬質膜の成膜法:中間層であるAlN膜およびAlCrN膜Cの硬さについて,成膜条件により制御可能であることが分かった.また,DLCについても同様に制御可能であった.(達成度90%) (2)硬さの傾斜構造を有する硬質膜の成膜法:(1)の結果に基づき,硬度を傾斜させた皮膜をUBMS法のみで成膜することができた.(達成度100%) (3) DLC/傾斜構造複合膜被服Al合金の摩擦摩耗特性とその要因解析:摩擦摩耗試験を行い,硬度傾斜膜の耐摩擦・摩耗性を調査した結果,DLC/AlN硬度傾斜複合膜は,低摩擦係数0.1を示し,Al合金に直接DLCを施した材料に比べて80倍の摩耗寿命を呈した.さらにFEMによる応力解析を行った結果,DLC/AlN硬度傾斜複合膜はDLC膜内部の応力が低減していることを確認した.(達成度100%) (4)DLC/傾斜構造複合膜被服Al合金の疲労強度信頼性保証とその要因解析:疲労試験を実施した結果,DLC/傾斜構造複合膜を被服したAl合金は疲労強度が向上した.その要因について詳細に観察し,高靭性を有するDLC膜は中間層であるAlN膜から発生する疲労き裂の発生を抑制することと,圧縮残留応力との相乗効果によって疲労寿命が向上することが明らかとなった.(達成度100%)
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今後の研究の推進方策 |
得られた成果の一部をまとめて,国際会議にて公表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年9月開催の国際会議(AEPSE2015:The 10th Asian-Europian International Conference on Plasma Surface Engineering.於 韓国)に参加するための旅費として使用を予定していたが,当時,韓国国内でMERS(中東呼吸器症候群)が蔓延しており,安全を考慮して参加を取止めたため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度に,国際会議:Asia-Pacific Conference on Fracture and Strength 2016(APCFS2016)で発表するための旅費等に使用する.
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