研究課題/領域番号 |
25420010
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
吉原 正一郎 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (00311001)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腐食 / WE43マグネシウム合金 / AZ31マグネシウム合金 / せん断応力 / 流れ場における腐食速度 / 国際研究者交流:アイルランド国 |
研究実績の概要 |
1,流れ場における腐食実験・・・流れ場における腐食実験装置を製作した。具体的には、流量と時間を制御可能な送液ポンプを適用し、拍動を模擬できる装置を製作した。それを用いて、塩化ナトリウム水溶液および血液を模擬したRPMI1640培地を腐食液として腐食実験を行った。実験では、質量損失量、腐食形態と表面性状、化合物などを評価した。 2,腐食に影響を及ぼす因子・・・使用した材料は、AZ31および、WE43マグネシウム合金管を適用した。実験から得られたことは、材料に作用する腐食液の壁面せん断応力の大きさによって、腐食量の大きさが異なることを明らかにした。さらに、材料が有するひずみ量が大きいほど、拍動の流量が大きいほど、腐食量が大きくなることを明らかにした。また、上記の合金成分の違いも顕著であった。以上の実験から、腐食に影響を及ぼす因子を明らかにした。また、化合物もハイドロキシアパタイト系の物質が生成されることも確認した。 3,材料形状による腐食の違い・・・上記の結果を踏まえ、具体的には、腐食には材料に作用する壁面せん断応力の影響が大きいことを確認したため、板材や円管など、材料形状の違いにおける腐食への影響を調査した。そこでは、材料に作用する壁面せん断応力が大きい箇所から腐食する様子を確認し、壁面せん断応力の大きい箇所が腐食速度も高いことを、実験並びにFEMシミュレーションより確認した。 4,学会発表・・・国際会議(7th World Congress of Biomechanics:ボストン)に2件、国内会議に2件、学会発表を行った。また、今年度の成果を27年5月に日本機械学会へ査読付き論文として2件、投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実施計画①流れ場の腐食実験】において、流れ場における腐食実験については、腐食に影響を及ぼす項目、 1)腐食液流量の大きさによる材料に負荷される壁面せん断応力、ひずみ量、 2)材料形状の違い を確認し、各パラメータの大小による腐食速度の程度を定性的かつ定量的に示したことは当初の目的を達成するだけでなく、これまで報告にほとんどなかった管内流による壁面せん断応力が腐食進展に影響を及ぼすことを新たに示したことは、新規性を示しており、想定以上の結果を得ることができた。そこで、当初の予定にはなかった、管内流における壁面せん断応力による腐食損失量の大きさを確認するために、流体解析をANSYS/CFXを用いて実施し、それらにある程度定量的な評価を加えることができた。これは、本研究に欠かせない事項の一つであることは言うまでもなく、大きな成果と言える。これらの結果から、【研究実施計画②シミュレーションによる腐食アルゴリズム】の腐食シミュレーションアルゴリズムの基礎データ(データベース)を取得することができた。 さらに、【研究実施計画③学会発表】において、WORLD CONGRESS BIOMECHANICS国際会議(米国マサチューセッツ州ボストン)で2件の発表を、軽金属学会春季講演会(広島大学)および日本機械学会バイオメカニクス(朱鷺メッセ新潟市)において学会発表することができ、予定していた学会発表も達成することができた。 以上より、おおむね、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
①腐食シミュレーションの高精度化 腐食には、多くの影響因子(壁面せん断応力、ひずみ、形状の違い)が存在することを確認した。平成26年度の結果から基礎データを構築できたと考えて、シミュレーションを行うためには、腐食される確率・統計的な発想を考慮する必要がある。具体的には、腐食損失量に対して、複数のパラメータが影響を及ぼすことは実証済みであり、それらの因子を定量的に扱うために、統計学的手法および、最適化手法などを適用可能か、検討する必要がある。それらを踏まえて、腐食を予測するシミュレーション手法も、有限要素法を適用するか、そのほかの手法を適用するか検討する。 ②拍動を伴う腐食実験 これまでの腐食実験は、板材、及び円管の腐食に限ったものであったが、目的であるステントの腐食は、形状が複雑であり、ステント部材に作用する壁面せん断応力も一様ではないことは容易に想像できる。つまり、部分的に大きな腐食が生じる可能性もあることから、実用化に向けて、実際の形状での腐食実験が必要であることは言うまでもない。したがって、実際の現象を確認・検討するためには、WE43マグネシウム合金をステント形状に加工し、流量下の条件の下で腐食実験を実施したい。その結果を、平成26年度の結果と照らし合わせ、ステント形状での(拍動条件下)腐食挙動を明らかにすることを目的とし、腐食挙動を考慮したステント形状の最適化の方向性および指針を示したい。 ③学会発表 上記の成果を国際会議や国外の学会において発表等で公表する。
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