愛知県の事故データを用いて,自転車乗員と四輪車の事故分析を実施した.愛知県では道路の広さにともない,自転車乗員が道路を渡りきれないことによる事故が他の地域よりも多いが,他の地域と同様に見通しの悪い狭い道から自転車が飛び出す事故が最も多く,自動ブレーキでは対応困難な場合が多いことが示された. 自転車乗員と四輪車の衝突に関する有限要素解析から,自転車乗員の挙動について検討した.自転車乗員はペダルを踏み足を回転させるので,膝高さが変化する.膝高さが四輪車のフード前端高さより高い場合には,腰部がフード上を滑り,自転車乗員の頭部は四輪車のウィンドシールド上方やルーフヘッダなど,車両後方に衝突する.膝高さが四輪車のフード前端高さよりも低い場合には,大腿部がフード前端を軸として回転し,頭部の四輪車衝突位置はウィンドシールド下端となった.これまで自転車乗員腰部はフード上を滑ると考えられていたが,本研究によって膝高さと四輪車の前端高さの関係によって変わることが示され,事故再現や自転車乗員の頭部保護にも反映されることが期待される. 事故データから,四輪車のフロントピラーによる自転車乗員頭部の加害性が非常に大きいとの結論を得た.そこで,自転車乗員のフロントピラー衝突時のヘルメット有無による頭部保護について検討した.歩行者頭部インパクタを用いて衝突速度35km/hにてフロントピラーに対する打撃試験を実施したところ,頭部傷害値(HIC)はヘルメット着用で減少したが,HIC3000(重篤な頭部傷害の確率99%)を超えていた. 頭部の加速度波形を基にした簡易モデルを作成し,ヘルメットの変形と四輪車のフロントピラーの変形による頭部傷害値の影響を調べた.その結果,頭部保護を行うためにはヘルメットの変形だけでは不十分で,フロントピラーが6-7kNで座屈してエネルギーを吸収する必要性が示された.
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