シリカ粒子充填エポキシ樹脂複合材料の力学的特性を測定し,架橋密度などをパラメータとする母材樹脂の内部構造と力学的特性との相関について考察を行った.球状シリカ粒子を充填し,エポキシ樹脂コポリマーを硬化剤に対して過剰に加えた非化学量論比で硬化させて,様々な網目密度を有するエポキシ樹脂を母材とする複合材料を作製した.作製された複合材料の評価:作製されたシリカ充填エポキシ複合材料およびエポキシ樹脂の熱粘弾性特性を220 Kから470 Kの温度範囲で測定し,作製された複合材料のガラス転移温度および架橋密度を同定した.その結果,非化学量論比で硬化させることで架橋密度が2740から490 mol/m3,ガラス転移温度が440 Kから350 Kのエポキシ樹脂およびシリカ粒子充填複合材料を得ている. 2015年度では,直径300 nmのシリカ粒子を異なる体積充填率で作製したエポキシ樹脂複合材料について力学的特性の測定を行い,粒子の体積充填率の影響について考察を行った.その結果,架橋密度により曲げ強度が影響するものの,粒子の体積充填率に対しては大きな影響を及ぼさないことがわかった.破壊靭性値については,1300 mol/m3を超える高い架橋密度の母材に粒子の充填量が増加すると大きな値を示すのに対して,それ以下の架橋密度の母材に対しては体積充填率が大きくなるとむしろ母材単体の破壊靭性値より複合材料の破壊靭性値が低下することが判明した.さらに充填粒子の大きさを1600 nmの粒子を充填した場合,架橋密度が低い母材に対しても破壊靭性値は母材のときの値よりも低下することがないことが明らかとなった.すなわち,母材内のミクロな網目の大きさに対して,粒径が相対的に小さくなるとむしろ破壊靭性値が低下することが示唆された.したがって,粒径をナノサイズからさらに小さくすると破壊靭性値に悪影響することが判明した.
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