研究課題
身体運動の軸機関および支持機関である脊椎の疾患に対する診断・治療において,脊椎の剛性を把握することは,適切な治療方針・手術手技を決定する上で極めて重要である.そこで本研究では,脊椎の剛性を力学的観点より客観的・定量的に評価することを目的とし,複雑な脊椎変形挙動を6軸材料試験機を用いて実験的に調査する.特に,本科学研究費申請年度においては,損傷や疾患により生じた脊椎不安定状態を解消するための脊椎固定術において,損傷椎間への体内固定具の装着が隣接椎間にどのような影響を及ぼしているのかについて焦点を絞って研究を実施する.ここでの力学試験は,平成16・17年度科学研究費若手研究(B)の補助を受け開発した脊椎強度測定用6軸材料試験機を使用する.この試験機は,6組の垂直直動型アクチュエータによるパラレルメカニズムとエンドエフェクタに内蔵した荷重-モーメントセンサにより,任意の自由度において変位および荷重制御下での精密な力学試験が可能である.また,平成25年度に実施した改良により,多椎間脊椎を対象とした力学試験において,個々の椎体の変形情報を取得することが可能である.上述の試験機を活用し,平成27年度は,平成26年度に引き続きイノシシおよびシカ屍体の多椎間脊椎を用いた力学試験を実施した.具体的には,疾患を想定した損傷モデル,脊椎固定術を施した固定術モデル,および脊椎制動術を施した制動術モデルの各種試験体を製作し,各モデルに対して前後屈および左右側屈のそれぞれの運動に対応したモーメントを負荷し,これらの負荷に対する隣接椎間の可動域を計測した.その結果,多椎間全体の変位量を規定した試験において,固定術モデルおよび制動術モデルの隣接椎間可動域は損傷モデルに比べ増加すること,および増加の程度はどちらのモデルにおいても同程度であることがわかった.
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Journal of Orthopaedic Surgery and Research
巻: Vol.10, No.125 ページ: pp.1-6
10.1186/s13018-015-0270-0