研究課題
放射光を用いた回折コントラストトモグラフィ(Diffraction Contrast Tomography:DCT)を開発し,本手法を疲労損傷評価に適用することを検討した.DCTでは,個々の結晶粒で生じる回折現象を利用して,結晶粒ごとに形状をイメージングするとともに,結晶粒における回折条件の変化から結晶粒内の状態を評価できる可能性がある.本課題では,低サイクル疲労および高サイクル疲労試験を行いながら,DCTによる測定を行い,非破壊的に疲労試験中の結晶粒の組織観察を行った.本研究ではDCT測定結果から,疲労損傷評価に適用できる新たなパラメータとして,回折条件を満たしたときに現れる回折スポットの出現角度範囲およびその位置から算出される,結晶粒内の総方位差(Total miss-orientation:β)を提案した.このβは塑性変形が生じると増加することから,結晶粒内の転位密度などに対応して変化するものと考えられる.低サイクルおよび高サイクル疲労試験中の各結晶粒のβを評価し,さらに結晶3Dイメージングを用いてき裂が発生した結晶粒を特定した.その結果,き裂が発生した位置の結晶粒ではβの変化が他の結晶粒と比較して非常に大きいことが分かった.地震負荷などの過大荷重が作用した場合の疲労強度評価を目標として,余ひずみを受けた材料に対して,DCT観察を適用した.その結果,予ひずみ付与による転位密度の増加や転位のさ再配列挙動の評価や,過大負荷による低サイクル疲労寿命の低下をβの大きさから評価できる可能性があることが明らかとなった.き裂のイメージング手法として,平板状のサンプルに対しても適用可能なラミノグラフィの適用を検討した.ラミノグラフィを用いて転動疲労下のき裂進展を観察した結果,複雑なき裂進展挙動の観察に成功した.
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Int. J. of Fatigue
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http://dx.doi.org/10.1016/j.ijfatigue.2015.07.014
Frattura ed Integrità Strutturale
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