EBSD法を用いて純チタン膜材の疲労き裂周辺の結晶方位を測定した.得られた方位行列から,結晶方位差の回転軸をベクトルとして評価し,疲労き裂進展の際に活動したすべり系を推定した.その結果,純チタン膜材では,c軸が圧延方向と直交方向に約30°傾いた圧延集合組織を示し,荷重軸が圧延方向と直交する試験片の方が,圧延方向と平行な試験片よりもき裂進展が遅かった.回転軸ベクトルより,活動したすべり系を予測した結果,荷重軸が圧延方向と直交する試験片では底面すべりが,平行な試験片では柱面すべりが生じていた.底面すべりの臨界分解せん断応力は柱面すべりに比べて高いことから,き裂進展速度が低下したと考えられる.
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