研究実績の概要 |
本研究では,押出機を用いて,被膜プロセスと含浸プロセスを複合した廉価で新しいグリーンコンポジット・ストランド引抜成形法を提案し,撚糸内の繊維配向性を制御することによりばらつきの少ない優れた機械的特性を有する複合材料の作製を目的としている.結果として,ラミー紡績糸の表面配向角は局所的にばらつきがあり,得られるストランドはその縦弾性率が大きく変動することが判明した.また,縦弾性率は繊維体積率のばらつきによっても変動する.このため,縦弾性率の変動を抑えることのできる手法について検討した.その結果,以下のことが明らかとなった. 1.手法として,従来のラミー紡績糸でストランドを作成するのではなく,紡績糸を多数用い薄板状に作成した.この板材の引張試験の結果,その縦弾性率の変動を小さく抑えられることが新たに判明した. 2.信頼性理論の一つである一次近似二次モーメント法(First-Order Second Moment, FOSM)を用い,撚糸の縦弾性率は紡績糸数の増加とともに標準偏差がその平方根の逆数に比例して減少することを明らかにした.そして,これを実験結果と照らし合わせ,手法の妥当性を定量的に実証した. 3.紡績糸を異方性を有する有限要素モデル(Finite element modeling)によって表わして計算したところ,紡績糸の縦弾性率がばらついていたとしても,これが複数本で撚られた撚糸の縦弾性率の統計的変動は大きく減じられることが判明した.
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