研究課題/領域番号 |
25420020
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
米倉 大介 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (70314846)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 機械材料 / 材料加工・処理 / 表面処理 / 電子ビーム / 摩擦摩耗 / 合金化 |
研究実績の概要 |
平成26年度は,電子ビーム照射による粉末の飛散を抑制し,粉末を母材表面に効率的に含有させる粉末固定化手法の開発及び工具鋼SKD11に電子ビーム照射処理を行った際に鋼の結晶構造がα鉄からγ鉄に変わる理由を明らかにすることを目的とした.そのために粉末物質としてWおよびhBN粉末を用い,以下の項目について検討を行った. 1. 溶込量に及ぼす金属膜被覆の影響:粉末の飛散抑制を目的とし,母材表面に塗布した粉末層の上に,傾斜対向型DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて金属膜であるAgを成膜した.成膜に際しては塗布粉末層上に厚さ50nm程度のAg膜を一層コーティングしたものと塗布粉末層を厚さ0.5μmのAg層で挟み込んだ試料を用意した.これらの試料に電子ビーム照射処理を施した結果,W粉末を用いた場合では溶込量の増大が確認できた.特に塗布粉末層を厚さ0.5μmのAg層で挟み込んだ試料では塗布粉末層単体の場合と比べて2 at%程度の溶込量増大が確認できた.一方,hBN粉末を用いた場合では明確な溶込量の増大は確認できなかった. 2. 溶け込み量に及ぼす電子ビーム照射処理条件の影響:hBN粉末を用いた場合,粉末の溶込量増加に対しては金属層の利用よりも溶融過程時の電子ビーム照射電流値を低減させることが効果的であることがわかった. 3. γ鉄化機構:SKD11に電子ビーム照射処理を行った際に生じるγ鉄化の原因を検討するため,S45Cを母材として用い,その上にCr粉末層を塗布して電子ビーム照射処理を行った.その結果,Cr塗布粉末層を用いることでS45Cでも一部の結晶でγ鉄化することがXRDの結果から確認できた.ただし,Cr粉末の溶込量が少なく,処理層全面がγ鉄化はしていなかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の結果より,W粉末層を金属膜で挟み込むことで電子ビーム照射時の粉末の飛散を抑制でき,母材への粉末の溶込量を増加できること,hBN粉末層の場合は溶融時の電子ビーム電流を下げることで溶込量を増加できること,電子ビーム照射処理によるγ鉄化にはCrが重要な役割を果たすことなどを明らかにできた.したがって研究の目的は,当初の計画通り順調に進展していると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の方針としては,改質層の詳細を明らかにするためにEDSやXPSを用いた深さ方向の粉末の溶込み分布および粉末の存在状態の検討を行う.また摩擦摩耗試験および粉体の付着特性試験を行い,十分に粉末が溶け込んだ表面改質層の摩擦摩耗特性及び粉体の付着抑制特性に及ぼす電子ビーム照射処理の影響を明らかにする.なお,粉体の付着特性はステアリン酸マグネシウム粉末等の実際の錠剤の成型に用いられる粉体を用いた打錠試験によって検討を行う. 以上の検討を通して,粉末を用いた電子ビーム処理による摩擦摩耗特性に優れた表面改質技術および金属表面への粉体の付着抑制手法を開発する.
|