2次元き裂伝ぱ解析に基づいて予想されるき裂先端位置と,実験的に観察されるき裂先端位置が大きく食い違うことがあり,その原因を追求するために3次元き裂伝ぱ解析を実施した。3次元き裂伝ぱ解析ではその数値的取扱の困難のため,当初は比較的単純形状のき裂先端形状を想定したが,熱源に最も近いき裂先端位置は観測値とよい一致を見た一方で,き裂前縁の形状を応力解析の結果から推定することは困難であった。そのため,この時点まで用いていた従来の要素ベースの解析(3角形一定表面要素を用いた3次元き裂問題の解析手法)では複雑形状のき裂形状を表現することが困難であったため,要素を使わないメッシュレスな応力解析により3次元き裂の伝ぱ問題が解析できないかを検討することとした。平成27年度は主として2次元問題における体積力法のメッシュフリー化の研究を行い,その後半で3次元き裂の伝ぱ解析にも有効な手法を着眼するに至った。さらに,解析結果と実験結果を総合することで,どのような力学的条件がレーザかんなを安定的に生じさせるのかについて明らかにした。例えば30Wの連続照射型炭酸ガスレーザの場合,スポット直径を5mm程度として100mm/sの牽引速度でレーザを動かすと,30ミクロンほどの深さを安定的にき裂が進展し,その結果表面層が剥離できることが分かった。牽引速度を上げると表面からのき裂深さが小さくなり,はく離厚みは小さくなるがはく離自体は不安定化する。一方牽引速度が小さいと表面の溶融を招きやすくなり、その結果仕上げ面に凹凸が目立つようになることが明らかになった。
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