本研究では, Ti-Ni(Ti-50.3at%Ni)およびTi-Ni-Cu(Ti-41.0at%Ni-8.5at%Cu)を対象とした引張負荷-除荷試験を実施し,すべり臨界応力,変態誘起応力および機能劣化特性に及ぼす熱処理条件の影響を調べた. Ti-NiおよびTi-Ni-Cuのマルテンサイト変態誘起応力は熱処理温度の上昇に伴い減少する.Ti-NiおよびTi-Ni-Cuのマルテンサイト変態誘起応力の熱処理温度の上昇に伴う減少率は同程度である.すべての熱処理温度において,Ti-Niのマルテンサイト変態誘起応力の方がTi-Ni-Cuよりも大きい.Ti-NiおよびTi-Ni-Cuのすべり臨界応力も,熱処理温度上昇に伴い減少する.すべり臨界応力の熱処理温度の上昇に伴う減少率は,Ti-Ni の方がTi-Ni-Cu よりも大きい.このため,673K~723Kの熱処理温度の範囲では,Ti-Niのすべり臨界応力の方がTi-Ni-Cuよりも大きいが,773Kでは同程度となる.また,逆変態終了温度+30Kの環境温度では,すべての熱処理温度のTi-NiおよびTi-Ni-Cuのすべり臨界応力は,マルテンサイト変態誘起応力よりも大きい. すべての熱処理条件において,Ti-NiよりもTi-Ni-Cuの方が繰返しに伴い超弾性特性が著しく低下する.累積残留ひずみは,Ti-Niの場合は723Kで360~1800ksおよび773Kで3.6~1800ksの熱処理条件で,Ti-Ni-Cuの場合は673Kで360~1800ks,723Kで360ksおよび773Kで3.6~1800ksの熱処理条件で,繰返しの初期に急激に増加する.Ti-NiおよびTi-Ni-Cuの破損寿命は1サイクル目の応力振幅をパラメータとして用いることで破損寿命を整理することができる.
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