研究課題/領域番号 |
25420025
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
田邉 裕貴 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (00275174)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 密着強度 / 薄膜 / 転がり疲労 / はく離 |
研究実績の概要 |
本研究では,転がり接触荷重の繰返し負荷による界面はく離発生に着目し,その寿命を評価パラメータとして,これまで困難であった”非常に高い密着強度”を有する薄膜の密着強度評価や,”基材硬さの異なるセラミックス被覆材”の密着強度の定量比較などが可能な新手法を開発することを目的とする. 平成26年度は,主に,転がり疲労によるセラミックス薄膜の界面はく離発生寿命に及ぼす密着強度の影響について検討した.基材には炭素工具鋼JIS-SK105を,セラミックス薄膜にはCrAlN薄膜を使用した.まず,平成25年度の検討結果に基づいて,筆者らが提案・開発した「成膜後レーザ熱処理法」をセラミックス被覆鋼に対して実施し,膜硬さはほぼ一定で,密着強度が異なる6種類のセラミックス被覆鋼を作製することに成功した.なお,密着強度はスクラッチ試験により評価した. つぎに,これらのセラミックス被覆鋼に対して転がり疲労試験を実施し,それぞれの界面はく離発生寿命を調べた.その結果,界面はく離発生寿命には,スクラッチ試験により得られた密着強度との良好な相関関係が認められた.また,レーザ出力に対する界面はく離発生寿命の変化は,レーザ出力に対する密着強度の変化に比べて非常に明確であることがわかった.密着強度の代表的な評価方法であるスクラッチ試験では,測定時に塑性変形が生じやすく,測定結果に本来の界面強度が反映されにくい場合があるが,比較的小さな転がり接触荷重を繰返し負荷する転がり疲労試験では,塑性変形の影響が少ないため,界面強度がより強く測定結果に反映されたものと考えられた. 以上のように,平成26年度の研究により,転がり接触荷重の繰返し負荷による界面はく離の発生寿命をパラメータとした密着強度評価の可能性を示すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度には若干の遅れが生じていたが,平成26年度には,本研究の主たる目的である「転がり接触荷重の繰返し負荷による界面はく離の発生寿命をパラメータとした密着強度評価の新手法開発」の可能性を,具体的な実験結果により示すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により,はく離発生寿命をパラメータとした密着強度評価の可能性を示すことができた.今後は,基材硬さ,膜硬さ,膜厚などを変化させて実験を行い,はく離発生寿命に及ぼすこれらの影響について検討する予定である.また,昨年度までの成果とこれらの結果を基にして,適切な試験条件の選定や適用条件の明確化を進め,提案法の具体的な評価方法と評価システムの確立へと繋げる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
小額の残金が生じたため.
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次年度使用額の使用計画 |
物品費に加え,消耗品の購入に充てる.
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