研究課題/領域番号 |
25420028
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
楠川 量啓 高知工科大学, 工学部, 教授 (60195435)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | PZT / 電気泳動法 / pH値 / 圧電定数 / ユニモルフアクチュエータ |
研究概要 |
今年度は市販および研究室で作製したチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)仮焼粉を用いて,ニッケル基板上に電気泳動法(EPD)により堆積させる予備実験を行った.研究室で作製したPZTは,相境界付近組成(Zr:Ti=52:48)のものとこれにニオブを添加したものである.ニッケル基板上へのEPD堆積において比較的安定した成膜が可能であったのは市販の材料粉であったため,この材料を用いて各種条件により堆積試験を行い,以下の結果を得た.エタノール中にPZT粉を分散させた懸濁液を150Vの電位によりEPD堆積させる場合,1%硝酸を用いてpHを調整したところ,pH値が4.4において最大の堆積量を得た.また,堆積量は堆積時間および負荷電圧にほぼ比例することがわかった.ただし,1回の工程で,ある時間以上堆積させても堆積物質が自重により剥がれるため,限界の堆積量がある. また,電圧を徐々に増加させながら堆積を行うと,堆積物表面が滑らかになることが分かった.このため,負荷電圧を50Vから200Vまで1分ごとに10Vずつ上げる条件で市販PZT粉をEPDにより堆積させた.これを焼成,分極の工程を経て,幅15㎜,長さ20㎜の片持ちはり状ユニモルフ型アクチュエータを作製し,その変位特性を評価した.圧電膜に6 kV/mmの電界を負荷すると,アクチュエータ先端で2.4 μm の変位量を得た. 今回成膜したPZTの圧電定数d33を測定したところ,240 pC/N であった.この値は同じ材料を通常の加圧成型により作製した圧電セラミックスにおいて得られた値 340 pC/N に比べて30 % 程度低い値となっており,EPD堆積法による圧電体の緻密度は低いことがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究実施計画におけるEPD堆積の条件を決定するという点に関しては,ほぼ達成できた.しかしながら良好な堆積を得る条件はpH値や温度などにかなり敏感で,パラメータを選定しつつ,最適条件を探索するのに予想以上の時間を費やした.また成膜された圧電体の特性特性向上のための条件をさらに詳細に調査する必要がある.今年度は単一材料による成膜にとどまったため,複数の種類の粒子を順次成膜し,圧電体に傾斜機能性を持たせる点はまだ不十分である. 成膜された圧電体の特性は評価できた.また,アクチュエータを作製し,その静的な特性評価は行うことができたものの,動特性等の評価が不十分である.
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今後の研究の推進方策 |
まず単体の材料を用いて,十分な圧電特性を有する圧電体膜の成膜条件を確立させる.当該年度では粒子の大きさあるいはその分布特性などの検討が十分でなかったことが明らかとなったので,この点もEPD法堆積の条件パラメータとして検討する. 特性の異なる材料を順次成膜して,傾斜機能性を持たせた材料を作製する.そしてこれがモノモルフアクチュエータとして十分機能するかを検証し,その駆動時に生じる電気弾性場を明らかにする.このデータが本研究の最終目的である強度評価を行うための重要なデータとなる.
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次年度の研究費の使用計画 |
購入した高温電気炉が予定した額より低額で購入できたため. 材料用試薬品に使用
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