研究課題/領域番号 |
25420032
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
久森 紀之 上智大学, 理工学部, 准教授 (80317510)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生体材料 / 医療・福祉 / チタン合金 / 解析・評価 / 機械材料・材料力学 |
研究概要 |
本研究で使用する電子ビーム積層造型機(Sweden Arcam社製Arcam A2-EBM System)(既設)の原理は,他の積層造型機と同様,三次元形状を多数の積層面に薄層化し,一層毎に粉末材料を撒き,形状断面部に電子ビームを照射し,その熱で電子照射された部分を硬化させる.これを繰り返すことにより三次元形状を積層造形する. ここでは,Ti-6Al-4V合金の造形を内部は緻密構造,表面はジオメトリなポーラス構造にする必要なビーム出力,最大造形径等の細部の仕様条件を緻密化Ti-6Al-4V合金の例に習い創製を行い,微細構造と高力学化の観点から以下を遂行する. (1)構造:積層造形材の結晶構造の解析を,微小部X線回折装置(既設)を用いて行なった.また,ミクロな結晶方位分布をEBSD(既設)を用いて結晶方位解析を行う.そして,空間的・時間的高倍率な微細組織を,既設の走査型共焦点レーザ顕微鏡,FE-SEM(EDX)などの観察装置を用いて詳細に観察した. (2)力学:内部は緻密構造,表面はジオメトリなポーラス構造で積層造形した本材料は,通常の鍛造品に比較し力学特性が異なることが予想された.したがって,基本的な力学特性である強度,延性,疲労強度等について評価した.緻密材の疲労特性は,造形時に完全溶融されない粉末が起点となり低下することを既に把握している.そこで,短時間高周波熱処理にて硬さと強度が向上する高強度化プロセスの構築を確立させるための予備実験および解析を行った.すなわち,力学特性に及ぼす短時間高周波熱処理の影響を評価した.とくに,本申請で購入予定の平面曲げ疲労試験機を用いて,生体応用を視野に入れた条件下で疲労寿命評価を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミクロな結晶方位分布をEBSD(既設)を用いて結晶方位解析を行う予定であったが,試料の作製が困難であり,結果に至っていない状況にある. また,短時間高周波熱処理にて硬さと強度が向上する高強度化プロセスの構築を検討したが,試験条件の決定あるいは最適化までは至っておらす,継続的な疲労特性の把握が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
まず,結晶構造の詳細な解析と,短時間高周波熱処理条件の最適化を継続して実施する. そして,骨欠損部に埋入した同材が骨と直接結合するためには,その表面で骨類似アパタイト層の形成,すなわち,骨伝導能の付与が必要である.今後,擬似体液中で自発的にアパタイトが析出する骨伝導能の付与を,ジオメトリなポーラス形状による空間デザインについて検討する.それには,表面のイオン濃度を高めることが重要であり,最適かつ効果的なジオメトリなポーラス空間をデザインする.また,これまでの熱処理プロセスを施さずに ,すなわち,単にポーラス積層造形をし,擬似体液中に浸漬するのみでポーラス空間のイオン濃度が高まる反応プロセスを構築させることが重要である.つまり,析出反応の促進を空間の大きさ,つまり,ポーラス形状とすることでかかる濃度(pH)を高めることを意図する. (1)ポーラス空間を変化させた造形材を作製する.その際,幅と高さの検討を通じて,積層造形可能な限界空間の程度を検討する. (2)(1)とは別に,擬似体液下で最適な空間から析出するアパタイトの結晶成長速度及び組織学的評価を行う(研究補助).具体的には,アパタイト核の発生から成長過程の空間的・時間的高倍率観察と結晶構造解析による存在状態を通じて,空間デザインが析出反応に関与するメカニズムを明確にする.
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