研究課題/領域番号 |
25420032
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
久森 紀之 上智大学, 理工学部, 准教授 (80317510)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生体材料 / 医療・福祉 / チタン合金 / 解析・評価 / 機械材料・材料力学 |
研究実績の概要 |
整形外科インプラントを必要とする患者の急速な増加に伴い,患者個々の骨格・症状等に合わせた高生体適合性インプラント(以下,カスタムメイドと称する)が求められている. 本研究では,骨形状の3D CADデータから薄層の断面形状を作製し,それを順次積層して三次元モデルを造形する技術の構築及びその高強度化プロセスを,チタン合金で行うことを目的とする. 同積層造形した本材料は,通常の鍛造品に比較し力学特性が異なることを前年度に明らかにした.すなわち,基本的な力学特性である強度,延性,疲労強度等について評価した.本年度は,とくに緻密材の疲労特性に及ぼす表面改質処理を実施し,同材の疲労強度向上を目指した.なかでも,曲げ応力については疲労強度の向上が実現された.すなわち,短時間加熱処理で表面硬さの向上と組織の微細化が疲労特性の向上に寄与した. 加えて,生体応用を視野に入れた擬似体液中で自発的にアパタイトが析出する骨伝導能の付与を,ジオメトリなポーラス形状による空間デザインについて検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
短時間加熱処理にて硬さと強度が向上する高強度化プロセスの構築を確立した.すなわち,力学特性に及ぼす短時間加熱処理の影響を評価し,そのメカニズムを考察した.また,その他の表面改質手法にもトライし,同材の疲労特性向上を目指した点は,順調に伸展したと考える. 一方,擬似体液中で自発的にアパタイトが析出する骨伝導能の付与については,その手法の検討および実施を行った.しかしながら,系統的な実験結果の採取までは至っておらず,継続的な骨伝導能の付与の検討が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
まず,単に擬似体液中に浸漬するのみでポーラス空間のイオン濃度が高まる反応プロセスを構築させる.つまり,析出反応の促進を空間の大きさやかかる濃度(pH)を高めることを意図する.したがって,擬似体液下で最適な空間から析出するアパタイトの結晶成長速度及び組織学的評価を行う.具体的には,アパタイト核の発生から成長過程の空間的・時間的高倍率観察と結晶構造解析による存在状態を通じて,空間デザインが析出反応に関与するメカニズムを明確にする. 次に,擬似体液中におけるより体内を考慮したアパタイト析出能の評価から,生体機能を高次化したチタン合金の生体応用を視野に入れた学術研究を通じて,QOLを向上させるインプラントデバイスを提案する.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費が計画した価格よりも安かった.
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次年度使用額の使用計画 |
生体機能性を評価するために必要な物品費である,薬品類費および加工類費と合わせる.
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