整形外科インプラントを必要とする患者の急速な増加に伴い,患者個々の骨格・症状等に合わせた高生体適合性インプラント(以下,カスタムメイドと称する)が求められている. 本研究では,骨形状の3D CADデータから薄層の断面形状を作製し,それを順次積層して三次元モデルを造形する技術の構築及びその高強度化プロセスを,チタン合金で行うことを目的とする. これまで,電子ビーム積層造形したチタン合金は,従来法で作製される鍛造材等に比べて,力学特性が異なることを報告してきた.すなわち,基本的な力学特性である強度,延性,疲労強度などについて評価してきた. 特に緻密材の疲労特性は,造形時に完全溶融されない粉末が起点となり低下することを把握していることから,欠陥を考慮した疲労強度の評価および表面改質による疲労受寿命の向上を検討した. 加えて,内部は緻密構造,表面はジオメトリなポーラス構造を有するチタン合金の創製を試みた.その際,粉末表面と溶融部表面との親和性,熱伝達による溶融・固化特性を結晶性及び組織学観点から系統的に解明し検討と考察を行った.疲労寿命の向上を期待するために,短時間熱処理で硬さと強度が向上する高強度化プロセスの構築の確立を推進した. そして,その表面で骨類似アパタイト層の形成,すなわち,骨伝導能の付与を検討した.ここでは,擬似体液中で自発的にアパタイトが析出する骨伝導能の付与を,電子ビーム積層造形材に対して実施した.すなわち,擬似体液下で析出するアパタイトの結晶成長速度及び組織学的評価を,従来材のアルカリ処理チタン合金と比較し,検討を行った.
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