現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
<当初の目標>:結晶性高分子材料を母材とするFRPを製作する.母材と繊維の組み合わせ,繊維配列および積層化の組み合わせなどを考慮し複数の試料を製作する. <現状>当初の予定では次の材料を使用しFRPを製作することとしていた. 母材として高密度ポリエチレン(HDPE),低密度ポリエチレン(LDPE),ポリプロピレン(PP)およびポリエチレンテレフタレート(PET)を使用する.繊維材としてタングステン繊維(0.1mm),カーボン繊維,ガラス繊維(直径は未定)を使用する.さらに繊維配向はそれぞれの母材と繊維の組み合わせで,一層一方向を基本とし,90°;(直交)積層,90°+45°積層などを製作する. 以上のような内容としていたが,現在は工業的に実用性の高い炭素繊維強化高分子材料(CFRP)の製作を行なっている.このCFRPの場合,母材はポリアミド,繊維は炭素繊維から構成されるため当初の予定であった高分子材料(例えばポリエチレン,ポリエチレンテレフタレート)などを使用していない.この点においては当初の計画外であるが,今後当初予定の高分子材料を使用するかどうかは未定である.しかしながら,これらの変更は工業的な実用性を考えた上での変更であり,測定対象の有用性からこの材料変更には意味があると考えている.また,X線による測定方法ではポリエチレンなどで見られる明瞭な結晶相からのピークは今回使用しているポリアミドには出現しない.このため,X線応力測定法の基本的測定技術の確認が重要となるが,それらの実験は既に終了し,X線による応力測定が十分可能であることを確認している.以上の点から,現在の進捗状況は概ね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
<目標>:製作した試料内の繊維および母材それぞれの応力評価を行うために,小型の引張試験装置をゴニオメータ上に設置し一軸引張の状態でX線応力測定を行う.その際,液体窒素を用いた低温冷却装置を使用し,サンプルを冷却することで温度環境を実現する. <実験方法>:製作した試料を極低温から高温状態まで各温度での応力評価を行う.はじめに,母材の応力評価として繊維を含まない母相材料単体での応力測定を行う.この際,引張負荷をかけた状態で応力測定を行い,重要なパラメータであるX線的弾性定数,ポアソン比などを調査する.これらのパラメータはX線の回折面および温度に依存するため,一種類の材料に対して回折面ごとの温度依存性を調査することになる.さらに繊維単体の材料も準備し母材と同様の応力評価を行う.炭素繊維はパラメータの温度依存が少ないことから測定精度が問題となる.さらに,ガラス繊維はX線による回折線ピークが出現しないことから回折面に依存しない機械的なパラメータを用いる予定である.これらの測定に続いて繊維と母材単体のデータを基礎としてFRPの応力測定をう.FRPして複合された繊維と母材の応力を各温度でそれぞれ測定し応力挙動を調査する. <解決すべき課題>:現時点で各メーカの製品を調査した結果,液体窒素を噴き付ける機構の冷却装置ではサンプルの温度をフィードバックする機能がないため,試料に対して一定温度の冷却風を吹き付けることになる.X線応力測定法においては,試料をいくつかの角度(ψ角)に傾けた状態で測定を行い,sin2psi線図から応力値を算出する.その際,サンプルに対する冷却風の角度を一定にする機構が必要となる.今のところ,引張装置自体にに液体窒素を噴きつけるノズルを固定し,吹き付け角度を一定にする方法を考案しているが,温度制御などがうまくいかない場合は検討を行う必要がある. *文中のsin2psiはsinψの2乗を意味する.
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度,試料の製作を中心に行い,購入予定の”吹き付け式極低温冷却装置”を購入しなかったため.購入を遅らせた理由としては,現時点で各メーカの製品を調査した結果,液体窒素を噴き付ける機構の冷却装置ではサンプルの温度をフィードバックする機能がないため,試料に対して一定温度の冷却風を吹き付けることになる.X線応力測定法においては,試料をいくつかの角度(ψ角)に傾けた状態で測定を行い,sin2psi線図から応力値を算出する.その際,サンプルに対する冷却風の角度を一定にする機構が必要となる.今のところ,引張装置自体にに液体窒素を噴きつけるノズルを固定し,吹き付け角度を一定にする方法を考案しているが,温度制御などがうまくいかない場合は検討を行う必要がある. *文中のsin2psiはsinψの2乗を意味する. 平成26年度は試料の冷却装置を準備する.現在,購入と自作の両面から検討中であるが,どちらの方法を選択するにしても昨年度に比較して支出は大幅に大きくなると考えられる.
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