研究実績の概要 |
本研究において,CFRP材の強化繊維である炭素繊維材と母材のポリアミドのX線応力測定法を確立した.炭素繊維や高分子材料に対して透過X線を用いた応力測定法を採用し,低角領域に出現する回折線を用いてsin^2psi法を適用可能とした.この方法から,板状のCFRP材およびパイプ状のCFRP材の強化繊維および母材それぞれの残留応力評価に成功している.また,透過法による測定に際して,これまで使用してきたクロム特性X線では透過力が小さく,X線の回折強度が極めて弱いために測定に時間がかかる.この問題に対して,波長の短いモリブデンの特性X線を使用し測定を可能とした.これにより,厚さ最大で約20mmのCFRP材に対しても透過X線を用いた内部応力評価が理論上可能となる.また,パイプ形状のCFRP材の場合はパイプに穴を開けることなく測定が可能となるり,前述のCFRPパイプの測定に応用している.この手法を基本として,クライオスタットを用いて極低温状態を作り出し,CFRP材の熱応力その場測定に取り組んでいる.その場測定は技術的に十分可能であるが,現在サンプルの冷却に問題が発生している.具体的にはサンプルを-60℃まで冷却することは容易であるが,それ以下の冷却温度になった場合,周囲の固定治具だけが冷却され,サンプル自体の温度がほぼ0℃まで上昇する現象が確認され温度設定ができない状態である.予想外の現象であり,現在その原因と対策を検討中である.対応策としては,現在断熱のためにサンプルを真空中で冷却しているが,サンプル周りにヘリウムガスを充満させ,ヘリウムガスの熱伝導で冷却を試みる.おそらく,本年7月頃までにはこの問題を解決し,極低温測定を実現する予定である.このような状況から,高温領域での応力測定には至っていない.これまでの研究成果は平成30年度内の国内発表6件,国際会議発表が3件の予定である.
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