研究課題/領域番号 |
25420046
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上村 康幸 東京大学, 生産技術研究所, 技術専門員 (20396906)
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研究分担者 |
土屋 健介 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (80345173)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メディア砥粒 / 導電性砥粒 / 複合めっき / 凝集 / 分散材 / スパイラル気孔 / 気孔充填 / スクラッチ |
研究概要 |
本研究の目的は、スクラッチで発現する硬脆材料の潜傷を防止するダメージレス固定砥粒工具の開発である。目的を達成するために、平成25年度は、1)導電性砥粒の凝集対策技術の開発、2)目詰まりに起因する気孔の充填方法の確立について検討した。その成果を以下に述べる。 1)めっき浴に耐性のあるフッ素系の水溶性樹脂と導電性砥粒を混合し添加すれば、樹脂量6mL/300mLで凝集が僅かに緩和され、16mLで工具表面にほぼ均一な砥粒層が得られた。さらに、添加量を26mLにすると、析出量は減少に転じたが、砥粒は均一に分散し、砥粒層はポケットレスとなった。水溶性樹脂の添加量で、砥粒の析出状態を変えられることが分かった。砥粒の析出量は、めっき時間(3から5分に変化)で約1.5倍、電流密度(16から30A/dm2に変化)で約2倍となり、これらのファクターで調整できることを確認した。これにより、砥粒の凝集性は回避され、めっき条件で砥粒層の複層化が可能であることが分かった。 2)複層化(分散化)した工具は、気孔やポケットが形成されているため、直接使用すると目詰まりを起こしてしまう。その対策として、1)で使用した水溶性樹脂を超音波と回転を付与して気孔部に充填(粘度 120.2mPa.s)した。樹脂充填の最大の目的は、加工圧力の分散化による高精度加工である。この充填工具で純アルミの加工テストを行った結果、加工抵抗が3N前後で樹脂は剥離し、気孔が露出した。そこで、樹脂の粘度を38.8mPa.sに下げ、気孔部の底部まで充填させるようにした。加工後の砥粒層は、20N以上でも気孔部の樹脂は剥離せず、ほぼ平滑化された。今後は、この条件で工具の製造を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)水溶性樹脂のめっき液に対する耐性が確認できたこと。また、水溶性樹脂を添加しても、複合めっきが可能であることから、めっき浴の組成には影響しなかったことが評価できる。 2)複合めっき浴に亜リン酸を添加すると、砥粒層は添加量が少ない場合、クラックや剥離を生じ、砥粒の保持強度は非常に低下することが分かった。添加量を上げると、砥粒の析出量は極端に減少する。そのため、亜リン酸だけを添加しためっき浴を使用し、砥粒の保持強度(硬度)を上げた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、導電性砥粒の工具で純アルミ、ガラスの加工実験を実施する。また、樹脂充填剤には、水溶性樹脂に砥粒やフィラーを添加することも必要である。特にガラス加工においては、充填層の平滑化が重要であり、加工圧力で検討する。 次に、26年度の研究計画である3)砥粒のバラツキを抑制するために、粒子に砥粒を埋め込み、工具と工作物の接触時に粒子の弾性で均一化されるか検討する。その際、使用するメディア粒子は使用するめっき浴に耐性なければならないため、各種粒子について検討する。 4)メディア砥粒の複合めっき技術を確立するために、導電性砥粒の分散化で使用した水溶性樹脂を用いて、砥粒率と凝集・分散について検討する。また、砥粒の保持強度を上げるために、めっき浴に亜リン酸を添加することも行う。 5)凝集対策を行った条件でスパイラル構造のメディア砥粒工具を製造し、砥粒層(気孔)の樹脂充填を行い、ガラス、純アルミの加工実験を行い、加工面精度、ダメージについて評価する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は今年度得られた研究成果を国内・国外で発表する予定であり、その旅費・調査研究のための費用としていることが理由である。 調査・研究旅費、国内外への研究成果の発表のための旅費および研究成果投稿費、外国語論文の校閲費として計上する。また、工具基材および工具製造時に必要となるめっき関連の薬品、被加工物の加工費、ダイヤ砥粒、セリア砥粒、樹脂などの消耗品費として計上する。 加工抵抗の測定用として使用していた動力計(3軸)の一軸が、測定不可となったため、修理あるいは新規に購入することを検討している。
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